つみたてNISAとiDeCoを両方利用することを前提にしたシミュレータをエクセル上で作ってみたので、その計算事例を紹介します。
今回の記事では、以下のような条件でシミュレーションを行ないました。
- 2018年時点で35歳
- 2018年から、つみたてNISAに毎月1万円、iDeCoに毎月1万円
- 投資先はどちらも先進国株式(例えば、eMAXIS slim 先進国株式インデックス)
- つみたてNISAは2056年(73歳)まできっちり利用する
- iDeCoは2043年(60歳)で一時金として受け取る
- 投資信託の信託報酬、iDeCoの手数料と一時金の税金は考慮しない
その結果、540万円積み立てたところ882万円(+342万円)になり、それを各制度の特徴に併せて受け取ると以下のような図になります。
これはあくまで1シミュレーションの結果で、あなたの将来の成績を保証しない点にご注意ください。
Contents
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おさらい:iDeCoとつみたてNISAの運用イメージはちょっと違う
そもそも、iDeCoとつみたてNISAは運用の考え方がちょっと異なっています。
つみたてNISAの場合
以下の図で示すように、つみたてNISAは、2037年以降は毎年少しずつ非課税枠が終わっていくイメージで運用されます。
出典:日本証券業協会
もちろん、例えば2036年時点で、それまでに購入した投資信託を全て一括で売却することもできます。
が、それでは2035年や2036年に購入した投資信託の非課税メリットはほとんど生かせないため、非課税メリットを最大化することができません。
非課税メリットを完全に利用するためには、この図のように非課税期間が終わるまで保有し続けたほうが良いのです。
iDeCoの場合
iDeCoの場合は、各年の非課税枠という考え方がありませんので、例えば、
- 60歳時点で一括売却して一時金として受け取っていもいい
- 分割取り崩しを行ないながら、残りの資産を運用し続けてもいい
と、個人の要望に応じて選ぶことになります。
iDeCoの受け取り、あなたは分割(年金)?それとも一括(一時金)? ~ ゼロからわかる!iDeCoの受取方法① | 確定拠出年金スタートクラブ
ちなみに、iDeCoは一括でも分割でも、受け取る際には必ず給付事務手数料(432円。2019年9月時点)が生じるため、手数料を最小限に抑えるためには一時金として一括で受け取るのが最適です。
ただし、一時金として受け取ると退職所得控除額を超えた分の50%が課税対象になります。
勤務している会社から退職金を貰ったときには少しややこしい話になってしまうのはネットのコンテンツでも話題になるとおりです。
退職金と個人型確定拠出年金を「同じ年に受け取る」のは要注意! | Diamond Online
両者の特性を考慮したシミュレータを作ってみた
出典:筆者作成のエクセルシミュレータ
というわけで、今回はつみたてNISAとiDeCoの特徴を考慮したシミュレータを作ってみた、と言う話です。
セル上でつみたてNISA分とiDeCoの分で損益を分けて管理しており、1回の計算で両者の損益が個別に求まるようにできています。
もちろん、乱数(モンテカルロシミュレーション)で将来成績を予想しますので、よくある複利計算機に比べると現実的な計算結果に近づきます。
計算内容:35歳(2018年)から2つの非課税制度に1万円ずつ積み立てると?
今回は、つみたてNISAとiDeCoの特性を考慮したシミュレータをエクセル上で作ったので、その計算結果を紹介したいと思います。
例えば、以下のような事例を考えます。
- 2018年時点で35歳
- 2018年から、つみたてNISAに毎月1万円、iDeCoに毎月1万円
- 投資先はどちらも先進国株式(例えば、eMAXIS slim 先進国株式インデックス)
- つみたてNISAは2056年(73歳)まできっちり利用する
- iDeCoは2043年(60歳)で一時金として受け取る
- 投資信託の信託報酬、iDeCoの手数料と一時金の税金は考慮しない
先進国株式のパフォーマンスは以下の通りにします。
リターン | リスク | |
---|---|---|
先進国株式相当 | 4% | 18% |
乱数は正規分布を想定していますので、実際の市場の出現頻度とは異なる可能性があります。
この計算結果は将来の成績を保証するものではありませんので、参考程度にご覧ください。
計算結果
つみたてNISA部分
2018年に35歳の人が、2018年からつみたてNISAを始めると、
- 最初の非課税枠が終わるのは2037年(54歳)
- 最後の非課税枠が終わるのは2056年(73歳)
となります。
もし、「ななし理論(非課税運用を終えた分を売却し、生活費にする。損益は問わない)」を採用するならば、つみたてNISAの運用益は54歳から73歳にわたって、まるで年金のように受け取ることになります。
20年後に儲かっていれば贅沢をする。損をしていれば清貧に暮らす。
こう考えると、投資のことで頭を悩ますことって減りませんか?
今回の計算では、総積立額240万円(毎月1万円 × 12ヶ月 × 20年)に対し、
- 最大評価額:2,895万円(+2,655万円)
- 最小評価額:58万円(-182万円)
- 中央値:423万円(+183万円)
- 元本割れ確率:19.3%
- 非課税メリットを受けられる年数:16.5年(中央値ベース)。※およそ3.5年は元本割れで終わる計算
と求まりました。
このように羅列で書くと分かりにくいですが、もっともありそうなイメージは240万円のお金が423万円に増え、20年の投資年のうち、およそ16年ほどはプラスのリターンで終わるイメージです。
iDeCo部分
2018年に35歳の人が、2018年からiDeCoを始めると、2043年に60歳を迎えます。
運用年数が25年に達しているため、現行制度ならば60歳からの受取が可能です。
仮に60歳時点で一時金として満額受け取るとすると、総積立額300万円(毎月1万円 × 12ヶ月 × 25年)に対し、
- 最大評価額:4,659万円(+4,359万円)
- 最小評価額:73万円(-227万円)
- 中央値:459万円(+159万円)
- 元本割れ確率:22.5%
と求まります。
もっともありそうなイメージは、300万円の積み立てに対し、お金が459万円に増えるというイメージですね。
今回はつみたてNISAとiDeCoで同じ商品を選択しているため、つみたてNISAの成績がよければiDeCoの成績も良くなります(逆もありえます)。
この計算の場合、老後の生活はこうなる
つみたてNISAとiDeCoの中央値ベースで考えると、老後の生活はおおよそこうなります。
- 54歳からつみたてNISAの運用益を受け取り(計423万円。1年あたり21万円)
- 60歳時点でiDeCoの運用益を一時金として受け取り(459万円)
- 65歳から公的年金受給
- 73歳でつみたてNISAの運用益の受取終了
結果としては、540万円積み立てたところ882万円(+342万円)になり、それを各制度の特徴に併せて受け取ったという計算ですね。
いやー、文章で書くと良くわからないですねw
というわけで、今回の話をエクセルで線表(ガントチャート)を作るとこのような感じです。
出典:筆者作成
こういうシミュレータをオンライン上に置いたら役立つんじゃないか、と思った次第です。
関心ある??
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まとめ
- つみたてNISAとiDeCo(個人型確定拠出年金)は非課税メリットの生かし方や、受け取り方などが微妙に異なっている
- つみたてNISAとiDeCoでそれぞれ同じ資産(先進国株式)にそれぞれ毎月1万円ずつ積み立てたとして、シミュレーションを行なった
- その結果、540万円の積み立てに対し、342万円増えた。利用者が2018年に35歳の場合、この運用益は54歳から73歳にかけて受け取った
ちなみに、2018年時点で35歳の人がつみたてNISAとiDeCoをそれぞれ満額利用すると、中央値ベースでの評価額はそれぞれ1,413万円、1,088万円になります。
いわゆる「老後2,000万円」を1つの目標とするならば、つみたてNISAとiDeCoの満額利用だけでも達成できるかもしれませんね。
なお、老後に2,000万円必要かどうかは個人次第なので、その点はご注意ください。