カナダで取引できる「Vanguard Retirement Income ETF Portfolio(VRIF)」という毎月分配型のETFがちょっと興味深いです。
VRIF: An easy way to boost income in retirement (or before) | Vanguard Canada
VRIFは、私たちが老後の収益を目的として投資する時の配分の参考にできたりするのでは?と思っていたりします。
残念なことに、日本には老後の収益獲得や資産寿命の延長を売りとするETFがありません。毎月分配型投信はしばしば「老後のニーズに合っている」などと言われますが、コストや特別分配金などを考慮すると、ちょっと扱いにくいですよね。
そこで、今回はVRIFの中身を調べることで、それを東証上場のETFでも代用できるかを調べてみたいと思います。類似のETFを同じように組み合わせたら、やや保守的な運用ができそうです。
[スポンサーリンク]
VRIFのポートフォリオが気になる
なぜVRIFに注目するの?
ファンドの「リタイアメントインカム」という名称が示すように、VRIFは老後の収益獲得を目的としています。つまり、定額の分配金と資産寿命の延長を目的として買われることを想定されています。
さて、今回注目するのはVRIFのポートフォリオです。
VRIFは「マルチアセットETF」と呼ばれるもので、株式50%、債券50%の比率で投資できる商品です。バランスファンドのETF版みたいなものですね。
思えば、マルチアセットETFすら売ってない日本。。。w
2020年9月末時点で、VRIFは8つのETFに投資しており、ファンド・オブ・ファンズ形式で運営されています。その投資先はバンガードらしく全世界の株式と債券です。
ここで重要な点なんですが、一般に分配金収益を前提とする商品は高配当な株式だけを集めたり、はたまた少し特殊な資産(オルタナティブ資産)に投資したりと、分散性に欠けていたり危険性が高いなどの特徴を持つことが多いです。
コロナショックで大ダメージを受けた高配当株ETFなんかは、ちょうどその典型例ですね。
しかし、VRIFは全世界の株式と債券に投資しつつ、利回り4%近い分配金収益を予定しています。それってすごくないですか?ってお話なんです。
どうやって利回りを確保してるんだろ?
というわけで気になったので調べてみました。以下はVRIFが投資する8つのETFの分配金利回りです。
ティッカー | 主な投資先 | 保有比率 | 分配金 利回り |
---|---|---|---|
VCB.TO | カナダ社債 | 24% | 3.3% |
VIU.TO | 先進国株式 (北米除く) | 22% | 3.0% |
VBG.TO | 全世界総合債券 (米国除く) (カナダドルヘッジ) | 22% | 2.1% |
VUN.TO | 米国株式 | 18% | 1.6% |
VCN.TO | カナダ株式 | 9% | 3.1% |
VAB.TO | カナダ総合債券 | 2% | 3.0% |
VBU.TO | 米国総合債券 (カナダドルヘッジ) | 2% | 2.9% |
VEE.TO | 新興国株式 | 1% | 2.5% |
あれ?最も高いものでも利回り3.3%なので、4%にはちょっと届かないですね。とはいえ、VRIFはカナダ社債、北米以外の先進国株式、カナダ株式あたりで利回りを稼いでる感じですね。
ここに挙げたETFを調べる限り、債券ファンドはいずれも毎月分配で運用されています。なので、毎月分配するための原資は債券に依存する部分が大きいのかもしれません。
ちなみにカナダ株式の利回りの高さは、カナダ株の上位構成銘柄が銀行であることに依存しています。市場まるごとを高配当ETF代わりに使ってる感じでしょうか。
バックテスト
VRIFが投資する8つのETFを使ってバックテストをしてみました。
VRIFを模したポートフォリオはコロナショック(2020年3月)での下落が約11%で済みます。やはり、安易な高配当株ETFに比べると優秀ですね!
東証上場ETFでVRIFの真似をできるか
大切な点はここです。なんといっても、私たちはVRIFに投資できないのですから!
日本企業の社債から組成されるETFが無い(2020年10月時点)ため、東証に上場する為替ヘッジ付きの米国社債ETFなどで代用することになるのかなと思います。総合債券の代用としては、為替ヘッジ付きの外国債券ETFでしょうね。
現実的には目標利回り4%や毎月分配はちょっときついと思います。
といったシミュレーションを下記記事でやってみたので、関心あれば合わせてご覧ください。
[スポンサーリンク]
まとめ
- カナダの退職者向けETF「VRIF」は収益獲得と資産寿命の延長を目的に運用される
- VRIFの配当の源は社債や比較的利回りの高い株式市場など
- 東証上場のETFでまるまるコピーは難しいが、真似っこはできそう
というわけで、東証上場シリーズでのシミュレーションはまたそのうち紹介します。
なお、日本からならばIB証券等を使えばVRIFを買えそうですけど、ちょっとハードル高いですね。米国ETFにも似たようなコンセプトのインカムETFはいくつかありますので、その話題はおいおい紹介したいと思ってます。