信託報酬とは、投資信託の運用期間中に発生する手数料です。年率x%で計算され、おおよそ「あなたの投資額 × 信託報酬の率」で概算できます。
将来の信託報酬率も公表されているため、投資信託の運用で唯一将来を予測できるパラメータになっています。
私たちは、銀行の預金利息のような「入ってくるお金」には気を使う一方で、「出ていくお金」には無頓着になりがちです。
例えば、銀行ATMで手数料を支払って時間外取引を利用してしまうのもその一例ですね。
投資信託も同様で、出ていくお金に無頓着になると、あなたの利益は減ってしまいます。
せっかく元本割れのリスクを取って資産運用を行っているのに、出ていくお金が多いと儲からなくなるのです。
これって問題だと思いませんか?
あなたがこれに同意するなら、投資信託の手数料には気を使ったほうが良いです。
これから示すように、ちょっとした差でも将来の運用成績はだいぶ変わりますよ!
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2つの投資信託の将来の成績を予想する
同じコンセプトで運用される、信託報酬が異なる2つの投資信託の将来の成績を乱数シミュレーション(モンテカルロ法)にて予想します(乱数計算参照時の注意点)。
その2つにそれぞれ30年間、毎年1万円の積立投資を行ったと仮定し、30年後の成績を比較します。
比較する投資信託
今回は以下の2つの投資信託を例題にします。
- One たわらノーロード TOPIX(信託報酬:0.1944%)(「たわら」)
- 三菱UFJ トピックスインデックスオープン(信託報酬:0.702%)(「TIオープン」)
この2つはいずれもTOPIX(東証株価指数)に連動するインデックスファンドで、TOPIXとほぼ同等の運用成績を期待できます。
ただ、運用方針は同じ一方で、信託報酬が0.5076%違うのが特徴です。
信託報酬が違うのは運用会社の方針の違いです。たわらTOPIXのほうが後発で、最近の信託報酬引き下げ競争を意識されています。
参考指数の過去の成績
TOPIXの過去の運用成績は、
- リターン:4.8%
- リスク:17.9%
として、計算を行います(2003年3月以降の成績。出展は投信アシスト)。
信託報酬に基づき成績を補正する
信託報酬は投資信託のリターンを引き下げる効果があります。そこで今回は、TOPIXのリターン(4.8%)から各投資信託の信託報酬を引いた残りを、各投資信託の期待できるリターンだと仮定します。
それを表にまとめたのが以下です。
たわら | TIオープン | |
---|---|---|
信託報酬 | 低い | 高い |
リターン | 4.6056% | 4.098% |
リスク | 17.9% | 17.9% |
シャープレシオ (運用効率) | 0.26 | 0.23 |
用語:シャープレシオについて
シャープレシオ(= リターン / リスク)は投資信託の運用効率を示します。
今回は、もともとTOPIXの過去の運用成績が、リターンに対してリスクが高いため、シャープレシオは低いです。
それに加え、信託報酬分を差し引いたため、投資信託のシャープレシオはさらに低くなってしまいました。
計算:30年後の運用成績
たわら | TIオープン | |
---|---|---|
信託報酬 | 低い | 高い |
計算回数(回) | 1,000 | 1,000 |
総投資金額(万円) | 360 | 360 |
最高評価額(万円) | 6,519 | 5,008 |
最低評価額(万円) | 100 | 85 |
平均評価額(万円) | 769 | 689 |
元本割れ回数(回) | 194 | 229 |
元本割れ確率(%) | 19.4 | 22.9 |
運用成績は約80万円の差
今回の計算では、信託報酬が低い「たわらTOPIX」と、信託報酬が高い「トピックスインデックスオープン」の平均評価額はの差は約80万円になりました。
信託報酬はわずか0.5%の差ですが、30年後には大きな差として現れます。
できるだけ大儲けしたいですよね?
それならば、信託報酬の低いたわらTOPIXを選ぶのが自然ではないでしょうか。
元本割れは約30回の差
将来も同じリスクリターンで運用できると考えられる場合、リターンに対してリスクが高すぎると元本が割れる確率は高くなります。
今回の計算では、信託報酬の差によって約3%の違いが見られました。
あなたも資産運用で元本を割りたくないですよね?
それならば、やはり信託報酬の低いたわらTOPIXを選ぶのが自然ではないでしょうか。
事実:過去のトータルリターン実績も異なる
ここまでは計算上の話でしたが、「たわらTOPIX」と「トピックスインデックスオープン」は、実際の運用成績も異なります。
以下はモーニングスター社のトータルリターン相対比較チャート(2017年3~4月)です。
これによると、2つの投資信託はほぼ同じ成績ですが、過去2ヶ月間で「たわらTOPIX」は「トピックスインデックスオープン」の運用成績を0.05%上回りました。
単純に6倍すると、1年間で0.3%の利回り差がつくことになります。
0.3%の利回りって大きいですよね?
2016年に銀行預金金利が0.02%から0.001%に引き下げられた際に、いろいろ騒ぎになったことを考えると、0.3%の差は優位な差だと思います。
あなたはいかが感じるでしょうか?
以上のように、信託報酬の優劣はそのまま投資信託の運用成績に直結します。もちろん、信託報酬が低いほうが私たちにとって優秀な投資信託です。
信託報酬の低い投資信託の選び方
信託報酬の低い投資信託の選び方は簡単です。
投資信託を販売する金融機関のウェブサイトにいき、信託報酬の低い順に並び替え(ソート)すれば良いからです。
信託報酬の目安
2017年現在の状況ならば、
- 特に低いもの:0.1~0.3%程度
- まずます低いもの:0.5%前後
- やや高いと感じるもの:0.7%前後
- 高いと感じるもの:1%超
だと筆者は思います。
金融機関の変更も視野に入れるべし
もし、あなたがお使いの金融機関では信託報酬の低い投資信託を売っていないならば、金融機関の乗り換えも積極的に行うべきです。
特にもっと今以上に大きなリターンを手にしたいならば。
銀行から証券会社への乗り換えは積極的に
銀行で販売する投資信託は信託報酬が高いものも多いです。あなたがそのような金融機関を利用しているならば、もっと効率的に運用できる証券会社へ乗り換えることをオススメします。
「銀行員とのお付き合いで」とかそういう理由で乗換えを見送るのはやめたほうが良いです。その銀行員は、あなたの支払った信託報酬で「太る」のですから。
決して、あなたの儲けそこなったお金を恵んではくれません。
注意点:これはあくまで計算上の話
注意点として、この計算は2つの投資信託(「たわらTOPIX」と「トピックスインデックスオープン」)の、将来の優劣を約束するものではありません。
あくまで計算上はこうなるという推測の話であり、将来はパフォーマンスが変わる可能性があることも忘れないでください。
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まとめ
以上をまとめると、
- あなたが投資信託を選ぶ際に信託報酬の高低を無視してはいけない
- 信託報酬の低い投資信託を選ぶ努力は必要。銀行預金金利などにこだわっているなら特に
- 信託報酬の低い投資信託を選ぶ際には金融機関の乗り換えも視野に
です。
私たち個人投資家にとって、信託報酬は低いことが良いことです。
たくさん払っても良いことはありませんから、なるべく低コストの商品を選ぶ努力を欠かさないようにしたいところです。
関連して以下も。以下では、投資信託の購入時に発生する買い付け手数料と運用成績の関係を紹介しています。