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つみたてNISA運用中に暴落に巻き込まれたら、含み損はどの程度の期間続くの?

4. 始めた後の応用知識




つみたてNISAは、長く継続すれば儲かる可能性の高い投資です。

一方、一度暴落相場を経験すると、その損失は長く尾を引く可能性があります

本記事では、もしもつみたてNISAを利用中に暴落相場を経験したら?を考えるべく、試算と過去の実績を利用して、どの程度の期間含み損が継続するかを考えます。

ただ、ガチで考えるといろいろ計算が大変なので、今回はかなりざっくりとした計算にて紹介します。

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計算方法

今回は話を簡単にするため、リスクとリターンだけを使った簡単な計算をします(説明はちょっとややこしいかも)。

投資信託の運用で言う「リスク」と「リターン」とはそれぞれ以下の意味を持っており、ある程度将来の見込みを計算することもできます。

  • リターン:年平均利回りのこと
  • リスク:年平均利回りの触れ幅(標準偏差(1σ))のこと。リスクが大きいほど、リターンも大きくふれて、安定しなくなります

そこで、例えば

  1. 100万円投資時点で暴落(= リターン – リスク × 2)の損失を被る
  2. 暴落の翌年から、毎年年平均利回り(= リターン)の運用成績が続いて、緩やかに相場が回復したものとする(この間、追加投資はしない)

という仮定の上で、含み損が何年続くかを考えるものです。

説明はややこしいですが、計算そのものは簡単です。

先進国株式を例に計算してみる

先進国株式とは

一般に先進国株式と言えば、日本を除く先進国株式から構成された株価指数「MSCIコクサイ・インデックス」と、それに連動する投資信託のことを指すことが多いです。

MSCIコクサイ・インデックスに連動する投資信託と言えば、eMAXIS slim 先進国株式インデックスやニッセイ外国株式インデックスファンドなど、人気ファンドが多いですよね。

先進国株式の過去20年間を使うと、回復までに10年

myINDEXのデータベースによると、先進国株式の株価指数を表す「MSCIコクサイ・インデックス」の過去20年間のリスクとリターンは以下の通りです。

  • リターン:4.8%
  • リスク:19%

MSCI コクサイ・インデックス (KOKUSAI) (円) | myINDEX

もし、100万円を積み立てた後に、暴落相場(リターン – リスク × 2)に巻き込まれると、損失見込み額は33万円(= 4.8 – 19 * 2)となり、1年後の運用額は67万円になります。

ここから、毎年年利4.8%で運用できたとすると、運用資産の残高は以下のように推移します。

年数
(年)
利回り
(%)
運用資産残高
(万円)
1-3367
24.870
34.874
44.877
54.881
64.885
74.889
84.893
94.897
104.8102

なんと、この計算では、100万円が67万円に減った後、100万円に戻るまでに10年かかります。

ただ、実際には積立投資を継続する限りは、投資信託の平均取得価額が低くなるため、これよりももっと早くに100万円に戻ります

しかし、それでも、一度大幅な暴落を経験したら、元に戻るまでに年単位の運用期間が必要であることは言えると思います。

実例:2008年の金融危機は6年目に回復

引き続き、myINDEXの年ごとの運用成績を利用し、2008年の年初に運用資産残高が100万円だったとして、計算してみます。

もし、100万円を積み立てた後に2008年の暴落を経験し、そこから追加投資をせずに運用を続けると、資産残高は以下のように変動します。

年数
(年)
利回り
(%)
運用資産残高
(万円)
2008-52.647
200938.266
2010-2.364
2011-9.158
201232.377
201354.6119

このケースでは、100万円が1年間で47万円に減り、再び100万円に戻ったのは6年目です。

上述の試算同様、暴落時も積み立てを続けていれば、もっと早期に100万円に戻るものの、それでも1度暴落を経験したら、その時点に戻すまでに数年の時間が必要であることがわかります。

暴落相場を経験したら、年単位で回復を待つしかない

言いたいのはこれですね。

暴落を経験したら、年単位で回復を待つしかない

ただ、多くの方は暴落を経験したら、その時点で投資をやめてしまう、とよく言われます。

やっぱ儲かってるときはいいんですけど、損をすると精神的なダメージが半端ないので、「自分は騙された」「早く解放されたい」と思うらしいです。

いつものこれ貼っておきます。

正直に言えば、この結果はショックでした。上記の書籍ではインデックスなら数パーセントくらいの利益が毎年続いて、仮にマイナスでもドルコスト平均法のおかげで長期的に損は広がらないよみたいなことが書いてあったからです。

著者からすれば、たかが数万円という話だとは思うし、たかが1年半くらいで何を言うとんねんみたいな感じだと思うのですが(書籍では毎月5万円の投資を30年続けようとありました)、初めての投資だった自分からすればやっぱりショックなものはショックです。

(中略)

今損をしている状況にありながら、自分がどうするべきか、どうするべきかをわかっていない自分への危機感です。これではまるで詐欺に引っかかったような人の心境です。

もともと何も考えなくても資産が増えていくよということで始めたインデックス投資、言われたとおりにこの1年半の間、私はほとんど投資のことを考える時間を持ちませんでした。

書籍の通り、勝手に増えていくでしょうというような甘い気持ちでいたのです。でも、今この心境を考えると、とてもそんな気持ちを継続することはできなさそうです。

出典:インデックス投資開始からおおよそ20か月の振り返り(リンク切れ)

つみたてNISAを始める際には、「暴落が来たら長い間耐えなければいけない」という厳しさがあることを念頭に商品を選ぶのが良いと思います。

もしくは、リスクの低い商品を選び、暴落がきても損失を抑える運用を行うか、ですね(この場合には、リターンも低くなります)。

 

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まとめ

  • 暴落時に大損してから、暴落前の資産まで戻すためには、年単位での時間がかかる。暴落後も追加投資できると、投資信託の平均取得価額が下がるので、もう少し早くなる
  • 予想以上の損失を抱えると、精神的ショックが大きくて投資をやめたくなる。「詐欺に騙された」ような感情を抱く方もいる。「自分は生き延びることができるか」を考えて欲しい
  • リスクとリターンの低い商品を選ぶと、暴落時の大損はしにくくなる代わりに、大きな儲けもなくなる。自分がどこまで損失に耐えられるかを考え、商品を選んでみてほしい

あんまり損失のことばかり語ると、「つみたてNISAなんかやらないほうが良いのでは」と感じてしまいそうですが、でもこういう側面も知っておくべきですから。

損失が生じる可能性も踏まえた上で、将来の利益のために、なんとしてでも20年続けましょうではないか。