今日のお題は「つみたてNISAは本当に複利で運用されてるの?」というお話。ほとんどのつみたてNISA対象商品は分配金が出ないので、「つみたてNISAは本当に複利運用なの?」と気にされる方もいらっしゃるようです。
結論から述べると、つみたてNISAでは、私たちが購入している投資信託の内部で複利運用されています。ですが、わたしたちが知っている教科書的な複利と、つみたてNISAの複利はイメージがだいぶ異なるものです。
というお話を紹介します。
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教科書的な複利のおさらい
最初に、「つみたてNISAが複利と異なる」と感じる理由を紹介します。以下が一般にイメージされる複利ですね。
たとえば、元金(もともとのお金)が100万円あり、この100万円を金利2%(年利)で1年間預金したとすると、1年後には102万円になる。この場合、2万円は、元金に対してついた利子である。この2万円も含めて(つまり102万円を)再び金利2%で1年間預けると、1年後には104万円となるのではなく、104万400円となる。この400円は、利子である2万円についた利子である。このように、利子にもまた利子がつくことを、「複利」という。
出典:複利とは | 知るぽると
しかし、実際のところ、つみたてNISAのほとんどの投資信託は分配金を出さずに運用しているので、わたしたちがイメージする「教科書的な複利」とつみたてNISAの運用スタイルは異なります。
加えて、株価が低迷すると、1年も投資しているのに全く増えないといったケースも出てきます。「投資すれば分配金で増えていく」イメージとはちょっとかけ離れた結果になるんですよね。
そこから、つみたてNISAは複利とは違うのでは?という話になってきます。
つみたてNISAの複利運用の仕組み
投資信託の内部で配当が再投資されています
では、つみたてNISAのお話。つみたてNISAは投資信託の内部で複利運用が行なわれています。
具体例として「eMAXIS slim 先進国株式インデックス」の運用報告書を見てみます。以下の画像はeMAXIS slim 先進国株式インデックスのマザーファンド(外国株式インデックスマザーファンド)の資産を示すものです。
出典:https://emaxis.jp/pdf/zenunyou/252653/252653_20180626.pdf
オレンジの枠で囲んだ部分に注目してください。
このファンドは2016年5月から2017年5月までに約68億円の配当金を受け取っています。この配当金はあなたに直接支払われない代わりに、投資信託(外国株式インデックスマザーファンド)の純資産に組み込まれています。そして、純資産に組み込まれた配当金は、次の株式購入のための代金等に使われます。
配当金で購入した株式から配当金を受け取ったら・・・これが複利運用ですよね。
ここではeMAXIS slim 先進国株式インデックスの例を挙げましたが、他の分配金を出さない、つみたてNISA対応の投資信託も同じです。つまり、複利運用は投資信託の内部で行われているのです。
投資信託の内部で再投資するメリット
このような運用の仕組みを取ることで、わたしたちには3つのメリットがあります。
★つみたてNISAは分配金を出さないことで3つのメリットが生じる
- 配当金をファンド内で再投資することで、わたしたちの利益が増えるメリット
- 配当金を外に出さないことで、課税を繰り延べるメリット
- 限られた非課税枠を分配金で消費しないメリット
この中で2番と3番は重要です。わたしたちは「分配金を貰って、自分で再投資する」ことに複利を感じがち。ですが、分配金は貰わないで投資信託の内部で複利に回してもらったほうが、多くのメリットを享受できるんです。
注意点:増え方はきれいな複利曲線にならない
残念ながら、つみたてNISAの仕組み上、資産の増え方はもっと複雑です。というのも、たとえ複利運用されていても、資産そのものが値下がりすることも多々あるからです。
以下は実際の投資信託への積み立てをシミュレートしたものと、複利曲線を重ねたものです。このシミュレーションでは利回り24%(!)の複利が効いています。
図中、赤丸でしるしをつけたように、たとえ複利運用であっても、一時的に大きく値下がりしたり、ほとんど増えない期間というのがあります。これが前述の教科書的な複利と、投資信託の複利の増え方の違いです。
とはいえ、青い線は徐々に増える角度が急になりつつあります。やっぱり増え方としては複利なんですよね。
ちなみに複利曲線はエクセルのFV関数を使って計算しています。
複利に関するよくある質問
つみたてNISAは単利ですか?
いいえ、複利です。
複利の周期はどのくらいですか?
つみたてNISAの複利に周期や複利が生じるタイミングといったものはありません。
つみたてNISAは預金と異なり、「一定期間運用したら一定額増える」という仕組みにはなってないためです。
複利運用にするための「設定」はありますか?
積み立てを設定する際に、分配金を「再投資」に設定してください。
ただし、つみたてNISAのほとんどの投資信託は分配金を出しませんので、分配金を受取にしようが再投資にしようが、最初から複利運用になっています。再投資が有効なのは、分配金を出しているごく少数の投資信託のみです。
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まとめ
- つみたてNISA対象の投資信託は複利運用されている。あなたに直接分配金は支払われないが、ファンドが受け取った配当金は内部的に再投資されている
- 資産の値動きがあるため、教科書的な複利の曲線のようには増えていかない。一時的に増えたり、減ったりしながら、長期的には増えていくといった傾向を取る
- 複利が働くタイミング・周期といったものはない。預金の仕組みとは別物です
繰り返しますが、投資信託は毎年一定の割り合いで増え続ける、との勘違いはなさらないようにしてください。わたしたちが知っている複利と、投資信託の複利の増え方とはだいぶ異なるものなのです。