つみたてNISAやiDeCo(個人型確定拠出年金)を始めようと思ったとき、「じゃあ投資する銘柄は何を?」と、いきなり銘柄選びに入ることって多いと思います。
それでたくさんある投資信託の違いがイマイチわからなくて、「つみたてNISA オススメ」とかグーグルで検索しちゃうという。
この流れ、あなたも体験していませんか?
もしあなたがつみたてNISAやiDeCoを通じて、「人生を良くしたい」「老後に困ること(老後破産)を避けたい」と思うのでしたら、銘柄選びの前に少し考えて欲しいことがあります。
これから述べる話は、「老後に必要なお金を考えて、それにフィットする商品を選ぶ下地を作ろう」というもの。
筆者個人としては、以下の流れでつみたてNISAやiDeCoの対象商品を選ぶことを提案します。
- 老後に必要なお金を考える。大幅に足りない場合には、投資よりも副業
- 老後に必要なお金を充足できるように、アセットアロケーションを考える
- 具体的な商品を選ぶ
以下、詳しく解説していきます。
[スポンサーリンク]
いきなり銘柄を選ぶ前に
ネットの「オススメ記事」はマス向けで、あなた個人に合うとは限らない
最初に知っておいてほしい点として、ネットのオススメ記事は「マス(mass。大衆の意)」向けの記事であり、あなたの年齢・年収・家族構成・負債状況を踏まえた記事にはなっていません。
東北投信でも「つみたてNISAのオススメ商品」みたいな記事は書いてありますが、これもあくまで商品性から選んだもので、あなたの実情に適しているかはわかりません。
例えば、
- 年齢25歳独身。大企業勤務
- 年齢50歳既婚。中小企業勤務で住宅ローン返済を抱えていて貯金わずか
- 年齢40歳独身。非正規雇用で貯金なし
と、状況の異なる3人がいた場合に、「全員が同じ運用して良いか」と言われたら、おそらく違うはずです。
ネットのコンテンツを参考にする際には、そのあたりを差し引いて考える必要があるのです。
ネットのオススメを鵜呑みにすると、失敗の原因になるかも?
2018年はなかなか厳しい相場が続いています。
つみたてNISAをきっかけに投資に入った人にとっては、いきなり試練の年になってしまっています。
例えば、つみたてNISAのオススメに挙がることが多い「eMAXIS slim 米国株式(S&P500)」は、ここ1ヶ月で-7.26%の値下がりを経験しており、この商品を買った多くの人が含み損を抱えているはずです。
これはeMAXIS slim 米国株式(S&P500)の商品性が悪いのではなく、もともと値動きの大きい商品なので当然の結果です。
「ネットにオススメって書いてたのに、こんなに損失抱えてどうしよう!」
って思ってる人って絶対いるって思うんですよね。
ここでつみたてNISAをやめてしまうと、お金を失った苦い思い出を作っただけで終わってしまいます。
だから、他人の安易なオススメに振り回されずに、あなたがきちんと理解し、納得した上で商品を買ってほしいのです。
銀行で投信買って大損した高齢者が騒ぎを起こすのも、銀行員がオススメした商品をわかったつもりで買ってるせいだと思います。
銘柄選定の前に考えたいこと
「どのぐらいまで失敗して良いのか」は考えたい
あなたが、つみたてNISA(やiDeCo)でどこまでリスクを取れるのか、言い換えると、どこまで損失を許容できるのかは考えておくべきです。
特に、50代を超え、老後のお金を強く意識しているならなおさらです。
考えるポイントとして、以下のような事柄があります。
- 現在、毎月いくらの生活費がかかっているか
- 今持っている資産 + これから見込まれる収入(と退職金)を貯蓄した場合、老後は生活できるのか(※)
※老後の生活費は、現在の毎月の生活費に300ヶ月分(25年分)ぐらい掛け算すれば概算できる
この概算を行なって、収入的に老後の生活が危うい場合には、あまり損失を許容できないことになります。
つまり、
- 今後引退まで働き続けてお金を貯め、現在ある資産と合算すれば老後は問題ない場合、投資は積極的にリターンを追って良い
- 今後引退まで働き続けてお金を貯めても、老後の生活を賄うだけの資産が無い場合、投資は保守的に(収入補填のためには、投資よりも副業などが確実)
などと考えることができます。
老後のお金をざっくりと考えるなら
現在の貯蓄ペースを老後まで継続した場合に、2,000~3,000万円貯められるなら、投資でリスクをとってもおそらく大丈夫です。
一方、どうしても数百万円にしかならない場合には、投資はほどほどに、副業などを考えたほうが安心です。
長期投資は成功確率は高いのですが、それはあくまで過去のデータなので。
将来必要なお金が求まると、アセットアロケーションを決められる
将来必要なお金の概算が求まると、そこからアセットアロケーションを決めることができます。
アセットアロケーションとは、運用する資金を国内外の株や債券などにどのような割合で投資するのかを決めることをいいます。アセットとは「資産」、アロケーションとは「配分」という意味を持っています。
資産は、大きく分けて「現預金」「国内株式」「国内債券」「外国株式」「外国債券」「不動産」「商品・金」など、同じような特性を持つ商品のグループを指します。アセットアロケーションは、その人の資産状況やリスク許容度、運用目的などによって人それぞれで適切な配分が異なります。
また、具体的に商品を組み合わせたものをポートフォリオといいます。
現在の投資理論によると、見込める利益や損失額はアセットアロケーションでほぼ決まってしまう、と考えられています。
- 老後に必要なお金
- 投資で得たいお金
- 老後までの運用年数
はアセットアロケーションを決めるための重要な材料になります。
- できるだけ確実性を重視するなら、ローリスクローリターンなアセットアロケーションを
- 高いリターンを目指すなら、ハイリスクハイリターンなアセットアロケーションを
ただし、ハイリスクとは値動きが大きいことを意味しますから、老後のお金が乏しく、失敗が許されない場合には、ローリスクローリターンに調整したほうが良いです。
アセットアロケーションが決まると、あとは商品を選ぶだけ
アセットアロケーションが決まれば、あとはそれに合わせて具体的な商品を選ぶだけです。
すなわち、
- 老後に必要なお金を考える。大幅に足りない場合には、投資よりも副業
- 老後に必要なお金を充足できるように、アセットアロケーションを考える
- 具体的な商品を選ぶ
という順番ですね。
「老後に必要なお金と耐えられる損失」は常に考えるようにしたい
正直、ここまでを考えるのは難しいと思います(だから、ファイナンシャルプランナーという職があるのであって)。
しかし、
- 老後のお金はいくら必要か
- つみたてNISAやiDeCoで耐えられる損失はいくらか
をしっかり考えて投資を始めたら、将来老後破産は回避できると思いませんか?
難しいとは思いますが、ぜひ一度考えてみてください。
つみたてNISAやiDeCoを始める前に読みたい参考図書
「お金は寝かせて増やしなさい」を挙げておきます。
投資の理屈が一通りかかれていますので、銘柄選びの一助になると思います。
なお、本書はつみたてNISAやiDeCoには最適化されていないため、制度そのものを詳しく知りたい場合には、別の書籍を当たることをオススメします。
[スポンサーリンク]
まとめ
- ネット上にあるつみたてNISAのオススメ記事には注意。その記事はあなたの年齢・年収・家族構成・負債状況などには最適化されていない「大衆向け」のコンテンツ
- 商品を選ぶ前に、老後のお金がいくら必要で、現在の状況では達成できるのか or できないのかを考えよう。頑張っても数百万円しか残せない場合には、投資よりも違う方法を選んだほうが良い
- 将来のお金が決まると、アセットアロケーションを決める手がかりになる。アセットアロケーションが決まれば、あとは具体的な商品を選ぶだけ
余談:つみたてNISAやiDeCoって難しいの?
この記事だけご覧になると、つみたてNISAやiDeCoってすごい難しいようにも読めますよね。
しかし、単に「老後のお金を考えて、それにフィットする商品を選ぶ下地を作ろう」と言ってるだけなので、本当は簡単なんです。
仮にロボアドを選んだとしても、そのAIはあなたが老後必要なお金の計算まではしてくれません。
だから、ぱっと見は簡単に見えても、将来思ったよりお金が増えておらず、後悔するかもしれません。
将来のお金の問題を先送りしてはいけません。
できるだけ早く対策を始めることで、より簡単に老後破産は回避できるのです。