つみたてNISAの商品選び。もう終わりましたか?
つみたてNISAに限りませんが、投資における金融商品選びって、
- ネットで「つみたてNISA オススメ」と検索したり
- 有名なFPが提案する商品をそのまま買ってしまったり
することも多いかと思います。
しかし、このような選び方では、本当にあなたに最適な商品を選べているか疑わしいところです。
相場が「おせおせムード」の時は何を選ぼうがみんな儲かりますし、自分自身の商品選びも「間違ってなかった」と誰しも考えます。
一方、「商品選びが正しかったのか」が分かるのはリーマンショックのような下落イベントが来たときです。
大きな評価損を抱えた証券口座を見て、「こんなはずでは・・・」とショックを感じるようでは、その商品選びは失敗だったのです。
そこで、以下の記事では、今後1年間でリーマンショックのような最悪の暴落イベントが発生時に、つみたてNISA対応投信はいくら損失を抱えるかを推定し、それに基づき、あなたにオススメの商品を選んでいただきます。
おそらく、見込み損失額をベースに商品選びを勧めるネット上の記事は少ない(というかほとんど無い)と思います。
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前提:1年間の見込み損失額の求め方
投資信託がベンチマークにする指数(インデックス)の過去のデータを利用します。
例えば、東証株価指数(TOPIX)の過去20年の成績は、
- リターン:3.2%
- リスク:17.7%
と求まります。
- リターン:あなたの好きな年利回りのこと
- リスク:リターンの標準偏差(1σ)のことで、リスクが大きいほど、リターンの触れ幅も大きくなります
例えば、このTOPIXのデータに基づくと、1年後の運用成績は68%の確率で、利回り3.2% ± 17.7%になると考えることができます。
そこで、もし1年後の利回りが3.2% – 17.7%になったとすれば、必然的に見込み損失額も求まりそうだ、という話です。
以下では標準偏差の範囲を2σ(95%)まで広げ、「リターン – (リスク × 2)」の運用成績になったときに、いくら損失を被りそうかを考えます。
なお、詳しく学びたいときには、書籍「お金は寝かせて増やしなさい」をご覧になってください。
①株式100%ファンドがリーマンショック級の下落に巻き込まれたら
ここでは、あなたの現在の積立総額が100万円だったして、もし明日リーマンショックが発生したら、今後1年間でいくら損失を抱えるか、を計算で算出したものを紹介します。
リスクとリターンは、myINDEXが2018年3月29日時点で提供する過去20年のデータを利用します。
以下で述べる数値は計算で得たものであり、あなたの将来の成績を保証するものではありません。
MSCI コクサイインデックスに連動する商品の場合(為替ヘッジなし)
つみたてNISAの定番商品と言えば、MSCI コクサイインデックスに連動する商品です。
具体的な商品例は以下の通りです。
- ニッセイ外国株式インデックスファンド
- eMAXIS slim 先進国株式インデックス
- たわらノーロード 先進国株式
- iFree 外国株式インデックス(為替ヘッジなし)
特に以下の2つはSBI証券のつみたてNISAランキングで、それぞれ2位、3位に入選するなど、個人投資家にとって大人気の商品です。
- ニッセイ外国株式インデックスファンド(3位)
- eMAXIS slim 先進国株式インデックス(2位)
例:ニッセイ外国株式インデックスファンドの見込み損失額はいくらか
ニッセイ外国株式インデックスファンドが追従するMSCI コクサイインデックスの過去20年の成績は以下の通りです。
- リターン:5.5%
- リスク:19.1%
リターン(%) | 5.5 |
リスク(%) | 19.1 |
見込み最大損失額 (投資額の%) | 32.7 |
計算上、ニッセイ外国株式インデックスファンドは、1年間で投資額の32.7%の評価損を抱える可能性があります。
あなたの積立額が100万円ならば、1年後に67万円まで減少するかもしれません。
ニッセイ外国株式インデックスファンドに限らず、eMAXIS slim 先進国株式インデックスやたわらノーロード 先進国株式も同程度の損失を抱える可能性があります。
この約33%/年の損失を大きいと考えるなら、あなたはニッセイ外国株式インデックスファンド等を選択肢から外すべきです。
余談:MSCI コクサイインデックスに連動する商品の場合(為替ヘッジあり)
MSCI コクサイインデックスに連動する商品の中には「為替ヘッジ」を行うものも含まれています。
為替ヘッジとは、円高・円安による資産価値の変動を低減することです。
ヘッジ付き商品の具体的な商品例は以下の通りです。
- たわらノーロード 先進国株式<為替ヘッジあり>
- iFree 外国株式インデックス(為替ヘッジあり)
為替ヘッジを行うことで、ヘッジがない場合の20~30%程度の損失を軽減できる可能性があります。
MSCI ACWIに連動する商品の場合
MSCI コクサイインデックスほどの人気はないものの、やはり定番商品として、MSCI ACWI(オールカントリーワールドインデックス)に連動する商品があります。
具体的な商品例は以下の通りです。
- 三井住友DCつみたてNISA全海外株インデックスファンド
- eMAXIS slim 全世界株式(除く日本)
- 野村つみたて外国株投信
このうち、野村つみたて外国株投信は「投信ブロガーが選ぶ!Fund of the year 2017」の第4位に選出され、一躍有名になった投資信託です。
例:野村つみたて外国株投信の見込み損失額はいくらか
野村つみたて外国株投信が追従するMSCI ACWIの過去20年の成績は以下の通りです。
- リターン:5.5%
- リスク:19.3%
リターン(%) | 5.5 |
リスク(%) | 19.3 |
見込み最大損失額 (投資額の%) | 33.1 |
計算上、野村つみたて外国株投信は、1年間で投資額の33.1%の評価損を抱える可能性があります。
あなたの積立額が100万円ならば、1年後に67万円まで減少するかもしれません。
野村つみたて外国株投信に限らず、三井住友DCつみたてNISA全海外株インデックスやeMAXIS slim 全世界株式(除く日本)も同程度の損失を抱える可能性があります。
この約33%/年損失を大きいと考えるなら、あなたは野村つみたて外国株投信等を選択肢から外すべきです。
楽天・全世界株式インデックス・ファンドの場合
投信ブロガー一押しの商品といえば、楽天・全世界株式インデックス・ファンドです。
日本を含む全世界株式に低コストで投資できる手軽さが評価され、「投信ブロガーが選ぶ!Fund of the year 2017」の第1位に選出されました。
楽天・全世界株式インデックス・ファンドを構成する資産クラスの過去20年間の成績は以下のように見積もりました。
- リターン:6.0604%
- リスク:18.8%
リターン(%) | 6.0604 |
リスク(%) | 18.8 |
見込み最大損失額 (投資額の%) | 31.5 |
計算上、楽天・全世界株式インデックス・ファンドは、1年間で投資額の31.5%の評価損を抱える可能性があります。
あなたの積立額が100万円ならば、1年後に68万円まで減少するかもしれません。
この約32%/年損失を大きいと考えるなら、あなたは楽天・全世界株式インデックス・ファンドを選択肢から外すべきです。
ここまでのまとめ
- 株式に投資する商品は1年で30%以上の損失を被る可能性がある
- この年30%超の損失を怖いと考えるなら、バランスファンドの選択を考えよう
②バランスファンドがリーマンショック級の下落に巻き込まれたら
もう少しリスクを抑えたバランスファンドを例に、見込み損失額を考えます。
「8資産均等型」商品の場合
バランスファンドのうち、特に人気の高いものに8資産均等型商品があります。
具体的な商品例は以下の通りです。
- eMAXIS slim バランス(8資産均等型)
- iFree 8資産バランス
- つみたて8資産均等バランス
eMAXIS slim バランス(8資産均等型)はつみたてNISA前からある有名投資信託ですね。
例:eMAXIS slim バランス(8資産均等型)の見込み損失額はいくらか
eMAXIS slim バランス(8資産均等型)を構成する資産クラスの過去20年間の成績は以下のように見積もりました。
- リターン:6.2%
- リスク:12.7%
リターン(%) | 6.2 |
リスク(%) | 12.7 |
見込み最大損失額 (投資額の%) | 19.2 |
計算上、eMAXIS slim バランス(8資産均等型)は、1年間で投資額の19.2%の評価損を抱える可能性があります。
あなたの積立額が100万円ならば、1年後に81万円まで減少するかもしれません。
この約19%/年損失を大きいと考えるなら、あなたはeMAXIS slim バランス(8資産均等型)と、類似する8資産均等型タイプを選択肢から外すべきです。
世界経済インデックスファンドの場合
8資産均等型商品と人気を二分する投資信託に「世界経済インデックスファンド」があります。
世界経済インデックスファンドを構成する資産クラスの過去20年間の成績は以下のように見積もりました。
- リターン:5.9%
- リスク:13.6%
リターン(%) | 5.9 |
リスク(%) | 13.6 |
見込み最大損失額 (投資額の%) | 21.3 |
計算上、世界経済インデックスファンドは、1年間で投資額の21.3%の評価損を抱える可能性があります。
あなたの積立額が100万円ならば、1年後に79万円まで減少するかもしれません。
この約21%/年損失を大きいと考えるなら、あなたは世界経済インデックスファンドを選択肢から外すべきです。
ここまでのまとめ
- バランスファンドは、(資産クラス次第だが)1年で20%前後の損失を被る可能性がある
- この年20%の損失を怖いと考えるなら、もっとローリスクなバランスファンドの選択を考えよう
③リスクの低いバランスファンドがリーマンショック級の下落に巻き込まれたら
特に低リスクなバランスファンドを例に、見込み損失額を考えます。
DC年金バランス30(債券重点型)の場合
DC年金バランス30(債券重点型)は、つみたてNISAの中でも特にリスクの低い商品の1つです。
DC年金バランス30(債券重点型)を構成する資産クラスの過去20年間の成績は以下のように見積もりました。
- リターン:3.1%
- リスク:5.5%
リターン(%) | 3.1 |
リスク(%) | 5.5 |
見込み最大損失額 (投資額の%) | 7.9 |
計算上、DC年金バランス30(債券重点型)は、1年間で投資額の7.9%の評価損を抱える可能性があります。
あなたの積立額が100万円ならば、1年後に8万円まで減少するかもしれません。
この約8%/年損失を大きいと考えるなら、つみたてNISAであなたに適した商品は見つからないかもしれません。
見込み損失額からオススメ投信を絞り込む手順
まず、1年間で許容できる損失額を考える
ざっくりとまとめると、各商品の見込み最大損失額は以下の通りです。
- 株式100%の投資信託:投資額の30~40%/年・・・ハイリスクハイリターン
- バランスファンド:投資額の10~20%/年・・・ミドルリスクミドルリターン
- 特にローリスクなバランスファンド:投資額の10%未満/年・・・ローリスクローリターン
言うまでもなく、大きな損失を被る可能性がある商品は、大きな利益を手にする可能性もあります。
利益と損失は表裏一体ですので、どれを選ぶかあなたがお考えください。
あとは記事中で挙げた投資信託を調べてみて
上記3択から1つ選んだら、あとは記事中で挙げた投資信託名をピックアップして調べてみてください。
ここまで例示してきた投資信託はいずれも無難に選択できる(と筆者が考えている)商品ばかりを挙げてきています。
例えば、あなたが、
- バランスファンド:投資額の10~20%/年・・・ミドルリスクミドルリターン
を選んだなら、「②バランスファンドがリーマンショック級の下落に巻き込まれたら」で紹介したeMAXIS slim バランス(8資産均等型)や世界経済インデックスファンドを要チェックです。
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まとめ
- つみたてNISAで商品選びに困ったら、生じるかもしれない損失額を考慮し、「どこまで損失を許容できるか」の視点で選んでみよう
- 計算上、株式100%の商品は投資額の30~40%、バランスファンドは投資額の~20%を1年間で失う可能性がある
- 大きな損失見込み額は、大きな利益の生じる可能性でもある。耐えられる損失と、欲しい利益の間ぐらいを選びたい
2018年現在の個人的オススメ
なお、参考までに筆者独断でオススメを挙げるなら、
- 株式100%の投資信託:楽天・全世界株式インデックス・ファンド
- バランスファンド:eMAXIS slim バランス(8資産均等型)
- 特にローリスクなバランスファンド:DC年金バランス30(債券重点型)またはFund-i 内外7資産バランス・為替ヘッジ型
あたりかなと考えております。