農業関連株に投資するETFは海水温の変化とパフォーマンスに関連性がありそうかを調べました。
2020年10月に赤道直下の東部太平洋の海水温が下がる「ラニーニャ現象」が観測され、すでに穀物価格に影響が出始めています。
シカゴ穀物相場が高騰している。CBOTトウモロコシ先物相場は8月の1Bu=320セントをボトムに、(2020年)10月15日の取引では404.25セントまで急伸している。約2か月で26.3%の上昇率であり、昨年8月以来となる1年2カ月ぶりの高値を更新している。小麦は5年ぶり、大豆は2年7カ月ぶりの高値を更新しており、コロナ禍の中で穀物相場は全面高とも言える展開になっている。
農産物の価格上昇は私たち消費者にはありがたくない話ですが、農業関連銘柄にとっては売り上げの増加となって、株価に影響する可能性があります。そこで、過去の海水温の変化と農業関連ETF(MOO)のパフォーマンスを比較することで、将来MOOのパフォーマンスが高まるかを考えます。
実際調べてみると、海水温の動向と農業ETFのパフォーマンスにはやはり関係がありそうです。資産形成の中核にはならないでしょうが、ポートフォリオに入れておくのも一興です。
では、一緒にみていきましょう!
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農業ETFと海水温の比較
今回は農業ETFとしてネット証券でも購入できる「MOO(VanEck Vectors Agribusiness ETF)」の過去の株価に注目します。
MOOって知ってます?MOOは世界の農業ビジネスや肥料メーカー関連企業から組成されており、主にアメリカやカナダ、ドイツなどの株式を含むETFです。
VanEck Vectors Agribusiness ETF | VanEck
今回は比較のために同期間の米国株式(SPY)の株価も使い、両者のパフォーマンス差とエルニーニョ・ラニーニャ現象の発生時期を重ねてみました。
なお、エルニーニョ・ラニーニャ現象の発生時期は気象庁のデータに基づいており、ざっくりと季節ごとにプロットしているため、あまり厳密ではない可能性があります。
エルニーニョ現象及びラニーニャ現象の発生期間(季節単位) | 気象庁
というわけで、最初にMOOが設定された2007年9月を基準とするグラフを紹介します。長期的にはSPYが良い成績になって終わったという、いつもの結論ですね。
次にMOOとSPYのパフォーマンス差に、海水温異常が発生した時期を重ねたグラフが以下です。
このグラフでは橙色がラニーニャ現象、灰色がエルニーニョ現象の発生時期を示しています。
MOOとSPYのパフォーマンス差を青い線で示しており、線が上向きの時にはMOOのパフォーマンスが優れ、下向きの時にはMOOのパフォーマンスが劣ります。基本的には下向きになっていますので、MOOよりもSPYのほうが良い成績になりやすいことも示しています。
さて、このグラフをざっくりまとめると以下の通りでしょうか。
時期 | 現象 | パフォーマンス |
---|---|---|
2007年春 ~2008年春 | ラニーニャ | MOO > SPY |
2009年夏 ~2010年春 | エルニーニョ | MOO < SPY |
2010年夏 ~2011年春 | ラニーニャ | MOO > SPY |
2014年夏 ~2016年春 | エルニーニョ | MOO < SPY |
2017年秋 ~2018年春 | ラニーニャ | MOO < SPY |
2018年秋 ~2019年春 | エルニーニョ | MOO < SPY |
2007年春から始まった海水温異常と、2010年夏から始まった海水温異常では、MOOのパフォーマンスも上がる傾向にありました。一方、それ以降は米国株の強さもあってMOOのパフォーマンスが劣後したものの、期間中に一時的にMOOのパフォーマンスが高まった時期もありました。
農産物の先物価格との比較
ところで農産物の価格例として、小麦先物価格と大豆先物価格を見てみましょう。上が小麦先物で下が大豆先物です。
この2つの図を見ると、2007年から2008年、2010年から2012年頃に農産物は大きく価格が上昇しており、MOOのパフォーマンスが好転したタイミングと比較的似ているように感じます。
ちなみに2010年から2011年には以下のような農業関連ニュースがありました。
- ロシア:干ばつで2011/12年度冬穀物のは種に遅れ 2010年9月1日
- ロシア:猛暑による干ばつの影響について 2010年11月2日
- FAO:ラニーニャ現象による農業への影響について 2010年12月28日
- 豪州:洪水被害地域と農産物生産について 2011年1月6日
- 豪州北東部の洪水で農産物出荷に悪影響 2011年1月7日
- 中国:干ばつ被害で小麦生産量に減少懸念 2011年1月20日
- ラ・ニーニャがトウモロコシの生産に与える影響(アルゼンチン) 2011年2月10日
- FAO:中国北部平原の干ばつで、深刻さを増す冬小麦への影響 2011年2月14日
出典:気象:ラニーニャ現象はほぼ終息 | 農畜産業振興機構(2011年5月30日)
今後も異常気象や農産物の不作の話題はあるでしょうから、ポートフォリオの片隅に農業ETFを入れておくと、思わぬ恩恵があるかもしれませんね。
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まとめ
- エルニーニョ現象・ラニーニャ現象の発生と、農業ETF(MOO)のパフォーマンスを比較
- 最近は米国株が強いものの、過去には農業ETFのパフォーマンスが優れるタイミングもあった
- 農業ETFのパフォーマンスが良い時には、農産物の先物価格が高い傾向にある(価格が高くなるので、農業ETFのパフォーマンスも改善するのだろう)
気象が株価に関係する、ちょっと興味深い話です。
余談ですが、農産物先物価格はゴールドの価格推移とも似ています。2020年のゴールドは2012年のピークを越えて価格上昇しましたので、農産物ももしかしたらそれを追うかもしれません。