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投資信託の「カントリーリスク」とは具体的に何が起きるの?

1. 始める前の基礎知識




最初に不適切な表現をしますが、現在のロシア・ウクライナの戦闘は、投資信託の「カントリーリスク」が具体的にどんなものかを知るのに適したタイミングのように思います。

あとあと振り返ったときに参照できるように、記録に残しておきたい、とちょっと思って記事にまとめたのがこれです。

ところで「カントリーリスク」って意識したこと、あります?

カントリーリスクとは、投資対象国や地域において、政治・経済の状況の変化によって証券市場や為替市場に混乱が生じた場合、そこに投資した資産の価値が変動する可能性

出典:カントリーリスク | SMBC日興証券

まあ、説明としてはこんな感じ。ですが、具体的にどんなことが起こるかがちょっとイメージつきにくいですよね。そこで今回は、カントリーリスクとは具体的にどんなことが起きるのか、を具体的にみていきます。

最初に結論をまとめてしまうとこんな感じ。

★今回のウクライナ侵攻で生じたカントリーリスク

  • 商品の取引が停止され、換金できなくなる
  • 為替や債券利回りが大きく変動し、まるでレバレッジ商品のような暴落が生じる
  • 本来の市場価格と大幅な乖離が生じる

では、一緒にみていきましょう!

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ロシア系資産に投資する投資信託を見てみる

投資信託の中には、ロシア株式やロシア債券に投資するもの、または通貨選択型(ここでは投資先の商品とは別に円売りルーブル買いするもの)があります。今回はこれらの投資信託の状況を見ていきましょ。

短期ロシアルーブル債オープンの場合

この商品はルーブル債(ロシア国債)に投資しています。ロシア国債は、2月23日時点で制裁の1つとして、日本国内での流通が禁止されました。

ロシアに足元を見られる事態を避けるため、ロシア国債の流通も禁止するなど「本気」を演出した。

出典:日本の制裁、G7の突出避け ロシア国債の流通禁止で「本気」演出 | 毎日新聞(2022年2月23日)

さて、肝心の投資信託ですが、なんと25日から取引が停止されてしまいました。購入はともかく、換金ができません

当ファンドは、現在、ご購入・ご換金お申込み受付を停止させていただいております。

出典:短期ロシアルーブル債オープン(毎月分配型) | 三菱UFJ国際投信(2022年2月26日時点)

カントリーリスクで、運用している資金がロックされてしまう可能性がある

これだけでもカントリーリスクの怖さを感じます。もし、「あと1か月ぐらいで換金しようかな」と思ってるタイミングならどうするんでしょう。。

制裁もセットなので、もしかしたら何らかの形で早期償還されるのかもしれません。今後が気になります。

ロシア・ボンド・オープンの場合

この商品もロシア債券に投資しています。ですが、短期ロシアルーブル債オープンとは違って、2月25日時点でまだ取引できるようです。

ただ、基準価額の下落率が10%を超えていて、レバナスもびっくりの大暴落になっています。

ロシア・ボンド・オープンの基準価額

出典:https://www.daiwa-am.co.jp/funds/detail/3337/detail_top.html

これは円高ルーブル安と、ロシア債券の金利が急騰(価格は下落)したためです。制裁の影響で、ロシア債券は投機的(いわゆるジャンクボンド)に格下げされてしまいました。

格付け会社S&Pグローバルは25日、ロシア国債の格下げを発表した。外貨建ての長期債務格付けを「トリプルBマイナス」から投機的水準にあたる「ダブルBプラス」へ1段階引き下げた。ロシアのウクライナ軍事侵攻に対応する欧米諸国の経済制裁が、経済・貿易活動や金融安定などに「重大な影響を与える可能性がある」と指摘した。

出典:ロシア国債、S&P「投機的」に格下げ 制裁の影響考慮(2022年2月26日)

もともと安全資産とは言えない商品ですけど、この変動っぷりにはびびりますね。

米国バンクローンファンド通貨選択ロシアルーブルの場合

次は通貨選択型のお話。SNSでは聞いたことない商品ですが、そこそこ純資産があるため、銀行でおじいちゃんおばあちゃんが嵌め込まれている商品かもしれません。

さて、この商品はアメリカのバンクローン(信用力の低い企業に出資する債券)に投資しつつ、あろうことかルーブルの為替取引を行っています。その結果、ルーブルの大暴落が基準価額に反映されています。

三菱UFJ 米国バンクローンファンド 通貨選択シリーズ<ロシアルーブルコース>の基準価額

出典:https://www.am.mufg.jp/fund/251768.html

下落率は10%台後半ぐらいでしょうか。おじいちゃんおばあちゃんに商品売った窓口担当者の方は来週大変なことになりそうです。

NEXT FUNDS ロシア株式指数の場合

最後にロシア株ETF(NEXT FUNDS ロシア株式指数(1324))を見てみます。戦闘が始まった時、一時的にモスクワ市場は取引停止となったほか、RTS指数は最大50%近い下落を記録しています。

さて、ロシア株ETFは、大口の取引は停止され、東証経由で取引できる分は引き続き取引できる状況にあります。

野村アセットマネジメントは25日、ロシア株の代表的な指数RTSに連動する「NEXT FUNDS ロシア株式指数・RTS連動型上場投信(ETF)」の設定・解約の申し込み受け付けを一時的に停止すると発表した。(中略)

停止の対象は、大口の機関投資家などによる取引所を介さない追加の設定や解約で、取引所に上場しているETFについては、引き続き取引が可能。ただし、ウクライナ情勢を巡る思惑を背景に需給が逼迫しているため、市場価格と基準価額が乖離する可能性があるという。

出典:野村アセット、ロシア株指数連動型ETFの設定・解約受付を一時停止 | REUTERS(2022年2月25日)

25日時点でのお知らせによると、ロシア株ETFの基準価額は1口84.21円なのに対し、市場価格は139円と大幅に乖離があるそう。これは将来的には84円台に向けて価格が落ちていくのでしょうか

お知らせ | NEXT FUNDS ロシア株式指数・RTS連動型上場投信

カントリーリスクをまとめると

今回のウクライナ侵攻で生じたカントリーリスクとは、

★今回のウクライナ侵攻で生じたカントリーリスク

  • 商品の取引が停止され、換金できなくなる
  • 為替や債券利回りが大きく変動し、まるでレバレッジ商品のような暴落が生じる
  • 本来の市場価格と大幅な乖離が生じる

実際に直面すると、やっぱりびっくりしますね。

インデックスファンドはどうだろう?

ところで、全世界株式などのインデックスファンドはロシア株式にも投資していますので、ここまでのカントリーリスクの影響を受けています。

そこで、eMAXIS slim 新興国株式インデックスとニッセイ新興国株式インデックスファンドのマザーファンドについても少し見てみました。

どちらもロシア株式に投資していますが、運用目論見書を見ると、ロシアに直接投資しておらず、アメリカ上場のADR銘柄などを通じて投資しているようです。その理由として、組み入れ銘柄明細の欄にはロシアの項目がなく、アメリカの中に「gazprom pjsc spon adr(ガスプロム)」などがあります。

ADRの表記がない銘柄もあるので、すべてがADRとは言い切れないようです。

なので、ロシア市場が閉鎖されても、流動性は維持できるようでした。

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まとめ

というわけで、改めてこれですね。

★カントリーリスクとは具体的にどんなことが起きるのか

  • 商品の取引が停止され、換金できなくなる
  • 為替や債券利回りが大きく変動し、まるでレバレッジ商品のような暴落が生じる
  • 本来の市場価格と大幅な乖離が生じる

一番怖いのは換金できなくなってしまう点でしょうか。単一の国に投資する怖さを見せつけられた気がします。