この記事では、「日本を含む全世界株式」の比較や運用のポイントなどを考えてみたいと思います。
この記事の対象となるのは以下のファンドです。
- たわらノーロード全世界株式
- SSGA全世界株式インデックス・ファンド
- eMAXIS slim 全世界株式(オール・カントリー)
- 楽天・全世界株式インデックス・ファンド
- SBI・全世界株式インデックス・ファンド
2019年12月現在で、商業上成功しているのはeMAXIS slim 全世界株式(オール・カントリー)と楽天・全世界株式インデックス・ファンドです。あなたがこれから全世界株式ファンドを選ぶならば、この2つを軸に選択することになると思います。
結論を述べると、両者はそれぞれトレードオフな特徴を持っていますので、あとは価値観に応じてご判断ください。
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日本を含む全世界株式
銘柄一覧
日本を除くものを含めると話がややこしくなるので、ここでは日本を含むもののみに制限しました。
★MSCI ACWIに連動するインデックスファンド
- たわらノーロード全世界株式
- SSGA全世界株式インデックス・ファンド
- eMAXIS slim 全世界株式(オール・カントリー)
★FTSE Global All Cap Indexに連動するインデックスファンド
- 楽天・全世界株式インデックス・ファンド
- SBI・全世界株式インデックス・ファンド
ベンチマーク | 信託報酬 (%) |
純資産 (百万円) |
|
---|---|---|---|
たわらノーロード | MSCI ACWI | 0.132 | 222 |
SSGA全世界 | MSCI ACWI | 0.528 | 1425 |
eMAXIS slim | MSCI ACWI | 0.1144 | 22626 |
楽天全世界 | FTSE Global | 0.212 | 32876 |
SBI全世界 | FTSE Global | 0.1102 | 5529 |
商業的に成功しているのは、
- eMAXIS slim 全世界株式(オール・カントリー)
- 楽天・全世界株式インデックス・ファンド
の2つですね。
投資先は日本株式を含む全世界株式
投資対象国のイメージ(厳密にはやや異なる可能性があります)出典:ピザロ
日本を含む全世界株式の投資先は、アメリカ株式を中心とした先進国株式と新興国株式です。
現在の株式市場はアメリカ株式の時価総額比率が高いため、投資したお金の約5~6割近くのアメリカ株式の買い付けに当てられます。
たまに、全世界株式と米国株式のポートフォリオを組んでる方がいますが、別に米国株式を買わずとも、全世界株式は結構な比率でアメリカの株を買ってることは知っておいてほしいです。
eMAXIS slim 全世界株式(オール・カントリー)の投資対象国とその比率(出典:三菱UFJ国際投信)
全世界株式の銘柄選定の要衝
信託報酬
当然ながら、信託報酬は低いほうが運用パフォーマンスが高くなります。
もっと調べるなら「信託報酬以外のコストがどの程度かかっているか」も見る必要がありますが、最初は信託報酬を基準にして良いと思います。
ベンチマークの違い
日本を含む全世界株式では以下の2つのベンチマークが使われています。
- MSCI ACWI(オールカントリーワールドインデックス)
- FTSE Global All Cap Index(グローバルオールキャップインデックス)
(微妙な差ですが)MSCI ACWIはアマゾンやアップルなど有名な米国企業(大型株)の比率が高く、FTSEオールキャップは時価総額の小さい「小型株」の比率が多くなっています。
- 米国の有名企業の保有比率を高めたいならば、ACWIに連動する商品
- 米国の大型株が割高だと判断するならば、FTSEオールキャップに連動する商品
をそれぞれ選ぶことになります。
最近はインデックスファンドの普及に伴い、大型株が割高になりやすい(インデックスからお金が流れやすいため)との話があるので、今筆者が選ぶならFTSEオールキャップに連動する商品です。
トラッキングエラーや運用成績など
一般にETFをマザーにするファンドはトラッキングエラー(乖離)が高くなる可能性があります。
トラッキングエラーが発生すると、ファンドの成績は上ぶれ(または下ぶれ)するため、最終的な成績は少し悪くなるかもしれません(価格変動が大きくなるので)。
以下は、2019年10月18日のブロガーミーティングで紹介されたデータです。
このデータはイボットソン・アソシエイツ・ジャパン株式会社が作成したもので、ミーティング参加者は同年11月7日に掲載の許諾を受けております。
出典:イボットソン・アソシエイツ・ジャパン株式会社
この表を見ると、ETFをマザーにするSBI・全世界株式インデックスファンドと楽天・全世界株式インデックス・ファンドは他のファンドに比べてトラッキングエラーがやや大きめの数値になっていることが分かります(トラッキングエラーの列に注目!)。
おそらく「ETFをマザーにする」こと自体がトラッキングエラーを大きくする要因になるのだと個人的には思います(SBI・バンガード・S&P500インデックス・ファンドも同様)。
なお、この表にはeMAXIS slim 全世界株式(オール・カントリー)がありませんが、おそらくオールカントリーはトラッキングエラーは小さいです。
というのも、オールカントリーのマザーファンドは他のeMAXIS slimシリーズ(除く日本)と共有している点と、唯一共有がすくない日本株は比率が7%程度なので、全体に対する影響が小さいためです。
小ネタ:オールカントリーと楽天VTについての独り言ツイート
ひとりごと。
例えば、#つみたてNISA でオールカントリーを買うか楽天VTを買うかって話があると思うんですが、考え方の1つにベンチマークの違いに注目する方法があると思います
んで、VTのベンチマークはFTSEなので、オールカントリーのMSCIのものよりも保有銘柄数が多く小型株を多くカバーしてます
— Mirai Asset@東北投信🇨🇦 (@instockexnet) December 6, 2019
インデックスファンドは時価総額比率の大きい企業にじゃぶじゃぶお金を入れる傾向にあるので、このケースではMSCIのほうがアメリカの巨大企業に微妙に依存しやすくなります
もし、大型株を中心に割高になっているのであれば、小型株比率の高いFTSEと楽天VTに分があると思ったのです
— Mirai Asset@東北投信🇨🇦 (@instockexnet) December 6, 2019
ただ、楽天VTの問題点はETFをマザーにしているために生じるトラッキングエラーの大きさですかね
その両者を勘案すると、それぞれ一長一短だなぁとおもいました
このあたりの「くせの違い」に注目すると、一見同じに見えるファンドの微妙な特徴の違いが見えてくるかもですね
どっとはらい
— Mirai Asset@東北投信🇨🇦 (@instockexnet) December 6, 2019
ベンチマークの特徴を考えると楽天・全世界株式インデックス・ファンドを選びたくなりますが、トラッキングエラーの大きさを考慮するとeMAXIS slim 全世界株式(オール・カントリー)を選びたくなりますね、というお話です。
相場が崩れないうちはオールカントリー優位だと思いますが、将来相場が低迷したときに両者は微妙に異なる値動きを見せるかもしれませんね。
全世界株式のポートフォリオの作り方
現代ポートフォリオ理論に基づけば、別のリスク資産を加えることで資産全体の値動きを抑えることが可能です。
最近の筆者は「株式100%」よりも、「株式90%、債券10%」ぐらいの比率のほうを好んでいます。その場合には、特定口座(課税口座)で別の債券ファンドを買い、つみたてNISAで全世界株式を買うイメージになると思います。
国内債券ファンドはいろいろ厳しい点もあるので、為替ヘッジ付きの先進国債券ファンド、またはヘッジ無しの通常の先進国債券ファンドも候補に挙がります。
とはいえ、「つみたてNISAでオールカントリーや楽天VTを買って、残りは定期預金や保険でまわす」という運用は、資産配分を考えなくてよい分だけ簡単で取り組みやすいので、それでも良いと思います。
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まとめ
- 日本を含む全世界株式は米国株式を中心に日本や他の先進国、新興国などの株式に投資している
- 商業的に成功しているのは、楽天・全世界株式インデックス・ファンドとeMAXIS slim 全世界株式(オール・カントリー)。それぞれトレードオフな特徴を持つ
- リスク資産の運用はこれ一本で、他は定期預金や保険商品などで運用しても良い。理論で考えると、債券ファンドを少量加えてやると、資産全体の値動きを抑えられる
余談:積み立てた資産の取り崩しの話
基本的に、投資信託は定額で取り崩すと資産の消費が早くなりやすいので、定率や定口での取り崩しを推奨します。
FIREムーブメント(いわゆるアーリーリタイア)では4%の取り崩しが提案されていますね。