米国株式ファンドのうち、楽天・全米株式インデックス・ファンドとeMAXIS slim 米国株式(S&P500)のどちらを選ぶかについて、小型株部分に注目しながら考えていきます。
最初に結論を述べると、最終的な期待利回りは楽天・全米株式インデックス・ファンドもeMAXIS slim 米国株式(S&P500)もほぼ同等になるはずです。これはどちらのファンドも時価総額の大きな株式(大型株)がファンドの運用成績をコントロールしやすいためです。
なので、この記事は「楽天VTIもslim米国株も似た成績になるのは知ってるんだけど、それでも違いをはっきりさせたいんだ」と考える方に捧げたいと思います。
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小型株を組み入れる効果
景気循環性を強める
小型株を含める効果の1つは景気循環性の獲得です。これは良い場合も悪い場合もあるのですが、楽天・全米株式インデックス・ファンドは景気後退期からの回復力がわずかに高いかもしれません。
今回はS&P500指数(大型株)とRussell 2000(小型株)指数を比較します。この比較は、Russell 2000のパフォーマンスがS&P500に対して高まるほど、小型株を投資範囲に含める楽天・全米株式インデックス・ファンドがeMAXIS slim 米国株式(S&P500)を上回る可能性がある、と置き換えることができます。
米コンサルタント会社のラッセルインベストメント社が1984年に開発した米国の代表的な小型株指数。
ニューヨーク証券取引所やNASDAQなどに上場している銘柄のうち、時価総額が上位1001位から3000位までの銘柄の浮動株調整後の時価総額加重平均型の株価指数です。米国の小型株ファンドのほとんどがベンチマークとして採用しています。
以下のグラフが、S&P500指数(大型株)とRussell 2000(小型株)指数のパフォーマンス比を取ったものです。両者の成績は時期によって異なっていて、大型株が強い時期と小型株が強い時期があることがわかります。
出典:大型株が小型株をアウトパフォームする理由 | CME Group
上記グラフは以下のほうが見やすいかもしれません。以下は上記グラフと同じくRussell 2000とS&P500の比を取ったもので、時折赤で上塗りされている部分が景気後退期(リセッション)です。
例外もありますが、小型株のパフォーマンスが高くなりやすい(グラフが上に振れる)時期はリセッション中かその直後で、大型株のパフォーマンスが高くなる(グラフが下に振れる)とリセッションに向かっている傾向があるように見えませんか?
ここから、小型株を投資範囲に含める楽天・全米株式インデックス・ファンドはリセッション中~直後にパフォーマンスが伸びやすく、eMAXIS slim 米国株式(S&P500)は次のリセッションに向かう時に成績が伸びやすい可能性を指摘できます。
大型株バブルの軽減
もう1つ、小型株を含める効果は大型株のバブルがあった時に、その影響を軽減する可能性がある点です。楽天・全米株式インデックス・ファンドはeMAXIS slim 米国株式(S&P500)に比べてバブル崩壊に強い可能性があります。
ここでは楽天・全米株式インデックス・ファンドとeMAXIS slim 米国株式(S&P500)をそれぞれ米バンガードの投資信託に置き換えて考えてみます。
★バンガードの類似ファンドで比較してみる
- 楽天・全米株式インデックス・ファンド→VTSMX(Vanguard Total Stock Market Index Fund Investor Shares)
- eMAXIS slim 米国株式(S&P500)→VFINX(Vanguard 500 Index Fund Investor Shares)
参考までにVTSMXとVFINXを1993年から運用していたとすると、現在の成績はほとんど差が付きません。しかし、例えば2000年頃を見ると、VFINX(赤)のパフォーマンスがちょい高めになっています。これはITバブルのあった頃ですね。
これを統計的に比較すると以下のような結果が得られます。
上記は全米株式(VTSMX)とS&P500(VFINX)を一定期間保有した場合のリターンを求めたものです。基本的に両者がほとんど一緒なのですが、短期的にはS&P500(VFINX)のパフォーマンスが優れやすく(S&P500最大値が大きい)、中期的には全米株式(VTSMX)が優れやすい(S&P500がやや低い)傾向があります。この差はITバブルのどこで売却したかの違いです。
元本割れ確率を見ると以下の通りです。
S&P500(VFINX)の元本割れ確率が高い理由は、ITバブル期の株高とその後のバブル崩壊が原因です。ここから、全米株式(VTSMX)は大型株中心のバブルとその崩壊があったときに、パフォーマンスの悪化を軽減する可能性があると指摘できると思います。
バブルはうまく乗ったほうがパフォーマンスが良くなる可能性は高いです。ですが、つみたてNISAのような長期投資においては、将来に向かってひたすら積み立てるという戦略を取るため、大型株のバブルは逆効果に働く可能性があります。
投資判断
正直好きな方を選べばよいと思いますが、この比較からは筆者は全米株式を投資対象とする楽天・全米株式インデックス・ファンドが好みです。とはいえ、楽天・全米株式インデックス・ファンドにはファンド特有の特性(一般的な投資信託と異なり、ETFをマザーファンドとしている点)もありますので、人によっては好まないかもしれません。
余談ですが、楽天・全米株式インデックス・ファンドとeMAXIS slim 米国株式(S&P500)を合わせて保有し、そのパフォーマンス差を追っていくと、景気後退の前兆を予測できるかもしれませんね。
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まとめ
- 楽天・全米株式インデックス・ファンドとeMAXIS slim 米国株式(S&P500)の違いを小型株の観点から比較
- 歴史的な特徴から判断すると、楽天・全米株式インデックス・ファンドはリセッション中~直後にパフォーマンスが伸びやすく、eMAXIS slim 米国株式(S&P500)は次のリセッションに向かう時に成績が伸びやすい可能性
- 楽天・全米株式インデックス・ファンドは大型株のバブルとその崩壊に伴うダメージを軽減できる可能性がある
というわけで、一見同じに見えるけど、実はちょっとした違いがある2つの米国株式ファンドの比較でした。
以下の記事は、eMAXIS slim 米国株式(S&P500)を買うことを前提に書いてましたが、そのうちちょっと書き直しておきます。
全世界株式についても、小型株の観点から同じような比較を行いましたので、ぜひ併せてご覧ください。