この話は昨日の続きです。
昨日の記事では、シャープレシオを0.1刻みでモンテカルロ法を走らせて、各値での元本割れ率の推移を求めました。
今回は
- S&P500(米国株式。VOOはS&P500に連動する海外ETF)
- TOPIX
- 先進国株式(MSCI コクサイインデックス)
- 新興国株式(MSCI エマージングマーケットインデックス)
の4つの資産クラス別に計算してみよう、という話になりました。
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今回やりたいこと
4つの資産クラスの元本割れの可能性を乱数で求める
先に述べたように、
- S&P500(米国株式。VOOはS&P500に連動する海外ETF)
- TOPIX
- 先進国株式(MSCI コクサイインデックス)
- 新興国株式(MSCI エマージングマーケットインデックス)
の4つの資産クラスの過去20年のデータ(リスクとリターン)を利用して、将来同じ成績で運用できた場合の元本割れの確率の推移を求めます。
昨日の記事でも紹介したように、過去がそのまま将来に続く限りは、長く運用し続けるほど元本割れの確率は下がります。
前回記事では具体的な商品名などには一切言及しなかったので、今回は上記4つの資産クラスについて、個別に求めてみた、という話です。
4つの資産クラスと具体的な商品との対応
- S&P500:eMAXIS slim 米国株式(S&P500)、iFree S&P500 インデックスなど
- TOPIX:ニッセイTOPIXインデックスファンド、eMAXIS slim 国内株式(TOPIX)など
- 先進国株式:ニッセイ外国株式インデックスファンド、eMAXIS slim 先進国株式インデックスなど
- 新興国株式:ニッセイ新興国株式インデックスファンド、eMAXIS slim 新興国株式インデックスなど
データの求め方
筆者作成のモンテカルロ計算ツール(エクセル)にて、以下の各運用期間ごとに10,000回の計算を行ないました。
- 1年
- 5年
- 10年
- 20年
- 30年
この話は、「投資信託の運用成績が正規分布になる」という前提を元にしていますので、今後予想される運用結果とは異なる可能性があります。
資産クラス別の元本割れ率の推移
というわけで、今回もグラフにしました。
生データはこれ。
S&P500 (米国) | TOPIX (日本) | MSCI コクサイ (先進国) | MSCI エマージング (新興国) | |
---|---|---|---|---|
シャープレシオ | 0.36 | 0.26 | 0.32 | 0.37 |
1年 | 36.64 | 39.83 | 37.41 | 35.64 |
5年 | 26.52 | 33.2 | 30.43 | 26.61 |
10年 | 20.87 | 29.32 | 24.14 | 21.71 |
20年 | 13.42 | 23.16 | 16.92 | 13.6 |
30年 | 8.79 | 18.44 | 12.28 | 9.53 |
元本割れ率が高く推移するほど「運用効率が悪かった = シャープレシオが低い」と言えます。
この結果を見ると、以下のように言えるかと思います。
元本割れ率が高く推移しやすいTOPIX
過去20年の日本市場は株価の変動が大きかった割には、大して儲からない市場でした(いわゆるハイリスクローリターン)。
そのデータに基づいて将来の予測を行なうと、どうしても元本の割れやすい市場として結果が出てしまいます。
運用効率の良いS&P500(米国株式)とやや効率の悪い先進国市場
前提知識として、MSCIコクサイインデックスには、S&P500構成銘柄も含まれています。
コクサイインデックスの約6割はアメリカ市場の銘柄から構成されますので、S&P500より運用効率が悪いということは、米国市場以外の構成銘柄があまり儲からなかった、という話でもあります。
米国株式に集中投資する投資家が多い背景には、米国市場の過去の運用成績が良かったことも1つの要因として挙げられます。
ちなみに、コクサイインデックスには日本を含みませんので、「日本市場が足を引っ張ったから運用効率が悪い」わけではありません。
意外と効率よく運用できた新興国市場
MSCIエマージングマーケットインデックスとは、中国やインドといった新興国の株式から成る指数です。
今回比較する4つの資産クラスの中で、最もハイリスクハイリターンな市場ですが、計算に用いた期間のシャープレシオは日本よりも良かったです。
値動きの大きくなりやすい市場ではあるので、その価格変動に精神的に耐えられるかどうか、は結構重要です。
つみたてNISAの期間である20年運用しても、元本が割れている可能性はある
昨日も書きましたが、つみたてNISAの期限である20年運用しても元本が割れている可能性は否めません。
とはいえ、毎年マイナスリターンになるような酷い商品に積み立てても、投資額の大部分は残る可能性が高いです。
「個人投資家はいつまで運用し続けても良い」というメリットを生かして、20年以上の長期投資に賭けるのも一興だと筆者は思います。
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まとめ
- 主要な資産クラスであるS&P500、TOPIX、先進国株式、新興国株式の将来の元本割れ率の推移を試算。最初の年が最も高く、運用年数とともに低くなっていく
- 米国株式に集中する投資家が多い背景には、米国株式が効率的にリターンを得てきた、という過去がある。この試算結果も米国株式の運用効率のよさを反映している
- つみたてNISAの期限である20年目時点で元本が割れている可能性は13~23%程度。20年という単位にこだわらずに運用したい
あちこちの記事で何度も繰り返しますが、つみたてNISAはできるだけ長く運用することを目指しましょう、ということで。