※記事内に広告を含みます

【モンテカルロ】乱数計算に基づくターゲットイヤーファンドの特徴。もしも金融危機を経験したら?

フィデリティ・ターゲット・デート・ファンドの運用イメージ4. 始めた後の応用知識




ターゲットイヤーファンドがどういった商品性を持つのかを理解するために、この記事ではターゲットイヤーファンドを模しての乱数シミュレーションを行ないます。

昨日の記事では、「ターゲットイヤーファンドの運用初期(株式中心で運用している時)に金融危機を経験すると、その後の損益は悪くなるかも」といった話を書きました。

この記事では、その金融危機を経験したら、ターゲットイヤーファンドは株式もののファンドと比べてどうなるのか、をシミュレートしてみた、という話です。

結論から言うと、運用初期の金融危機は大敵ではあるのですが、一方で最終的な運用着地点はあまりばらつかないのでは?という話も見えてきました。

★2つの投資信託の騰落率から、架空のターゲットイヤーファンドの基準価額を作る

  • 資産運用に手間はかけたくない
  • でも、投資信託選びはわからないし、リバランス(2つ以上の投資信託を運用した際に行なう配分調整のこと)とかできない

といった場合には、ターゲットイヤーファンドを選んでも良いかもしれませんよ!?

[スポンサーリンク]

ターゲットイヤーファンドは金融危機に弱い!?

ターゲットイヤーファンドの特徴と言えば、

★ターゲットイヤーファンドの特徴

  • 運用初期は株式やREIT(不動産投資信託)など、積極的なリターンを求める
  • 運用後期は債券を中心に安定的な運用に移行する

という特徴があります。

フィデリティ・ターゲット・デート・ファンドの運用イメージ

出典:https://www.fidelity.co.jp/fij/fund/focus/tdf_LP.html

これは、若年のうちはリスクを結構とっても良い一方で、高齢になったらなるべくリスクを抑えて運用しよう、という人生のアセットアロケーションの移り変わりをファンド側で担当しているからです。そのため、ターゲットイヤーファンドの強みは、このファンドに投資してほったらかしておけば、年齢に合わせたアセットアロケーションの調整まで全部勝手にやってくれるところ、にあります。

このメリットは「投資は難しい」と考える初心者にとっては大きなメリットになるはずです。

一方、ターゲットイヤーファンドは株式やREIT中心に運用しているときに金融危機を経験すると、その後の運用に大きなダメージを与えるのは昨日の記事で紹介したとおりです。

ターゲットイヤーファンドは運用後期ほどローリスクローリターンな運用に移行しますので、受けた損失を回収するための「回復力」が弱くなってしまうためです。

これから述べる話は、もしもターゲットイヤーファンドを運用している最中に金融危機が生じたら、というものです。

もしも、運用5年目に世界恐慌(1929-1932)クラスの株安が生じたら

では、ターゲットイヤーファンドを運用し始めて5年後に世界恐慌レベル(株価が8割下落)の株安が生じたら、ターゲットイヤーファンドの運用損益にどのように関わるか、を乱数にて考えます。実際にはターゲットイヤーファンドはバランスファンドの一種なので、株価が8割下落しても、基準価額も8割下落することはありえません。

が、計算の都合上、ここでは世界恐慌と同じ年次リターンになるものとして、計算を行ないました。

計算条件

ターゲットイヤーファンドに設定したリスクとリターンは以下の通り。

試算に用いたリスクとリターンはこちら
年数リターンリスク
1~35.8%17.5%
4~6(※)6.0%14.3%
7~9(※)4.9%11.0%
9~124.6%9.3%
13~203.7%6.9%

※5年目から9年目のリターンは世界恐慌時代と同じものを与える(5年目:-17.17%、6年目:-33.77%、7年目:-52.67%、8年目:-23.07%)

★計算条件

  • 毎月1万円の積立投資
  • 運用期間は20年(積立額は240万円 = 1万円 × 12ヶ月 × 20年)
  • 乱数は正規分布(投資信託の運用成績は正規分布にはならないので、このシミュレーションには再現性に限界がある)

運用結果

この条件で運用を行なうと、20年後の運用成績は以下の通りになります。

参考までに、初年度から20年目までターゲットイヤファンド1年目(リターン:5.8%)で運用した結果も載せておきます(以下、株式ファンドと呼びます)。

20年後の運用成績の比較
評価額評価額
株式
積立元本240万円240万円
中央値229万円247万円
複利
(リスクゼロの場合)
383万円457万円
平均値233万円272万円
最頻値230万円
(17個)
233万円
(9個)
最大値395万円1,013万円
最低値124万円66万円
20年後
元本割れの確率
61.0%46.7%
標準偏差40万円121万円

グラフにすると以下のような感じです。

ターゲットイヤーファンドの乱数シミュレーション

★凡例

  • 太い赤:ターゲットイヤーファンドの理想的な複利
  • 太い白:投資元本(これを下回ると元本割れ)
  • 細い線:乱数で得られた運用成績(1番から20番)

株式ファンドの乱数シミュレーション

★凡例

  • 太い赤:株式ファンドの理想的な複利
  • 太い白:投資元本(これを下回ると元本割れ)
  • 細い線:乱数で得られた運用成績(1番から20番)

この結果から言えることは特に以下のポイントなんじゃないか、と筆者は思います。

★乱数の結果からみる、ターゲットイヤーファンドの特徴

  • 20年後の元本割れ率はターゲットイヤファンドのほうが高い(大きな損失を被るとカバーできなくなる)
  • ターゲットイヤファンドは運用結果の標準偏差が小さく、20年後のばらつきが小さい
  • 意外にも最頻値はターゲットイヤファンドと株式ファンドで大差ない

商品の特性上、仕方ないことですが、ターゲットイヤファンドは複利が効いてくるタイミング(5~10年目以降)で安定運用に移行すると、その後の損益のばらつきが小さくなります。そのため、金融危機での大ダメージを回復しにくくなる一方で、そこから大損する可能性もまた低くなります。

ある程度安定運用化してきたタイミングで、最終的な運用成績が予想しやすくなる特徴を持っている、と言っても良いと思います。その点、株式ファンドは起死回生の一発逆転の可能性もありますが、空振りに終わるかもしれないのも特徴ですね。

余談:もしも債券の利回りがもっと低ければ

2018年現在、(特に国内)債券の利回りは低いですし、かつてほど効率的な運用はしがたくなっています(シャープレシオが低くなった)。そこで、以下のような条件でも計算をしてみました。

9年目以降のリターンを低めに設定したケース
年数リターンリスク
1~35.8%17.5%
4~6(※)6.0%14.3%
7~9(※)3%11.0%
9~122%9.3%
13~201%7.0%

※5年目から9年目のリターンは世界恐慌時代と同じものを与える(5年目:-17.17%、6年目:-33.77%、7年目:-52.67%、8年目:-23.07%)

ターゲットイヤーファンドの乱数シミュレーション(債券利回り低め)

★凡例

  • 太い赤:ターゲットイヤーファンドの理想的な複利
  • 太い白:投資元本(これを下回ると元本割れ)
  • 細い線:乱数で得られた運用成績(1番から20番)

この計算では、1,000個中934個のデータが元本割れに終わるなど、結構厳しいです。金融危機経験後にどれだけカバーできるかは、債券の利回りがどの程度か(シャープレシオが高いか)にかかっています。

とはいえ、20年後終了時点の標準偏差は32万円と、やはり運用損益自体は分散しがたい特徴も残っています。

ターゲットイヤーファンドは、株式中心に運用している時に金融危機のダメージさえ受けなければ、ある程度の利益と比較的想像しやすい「着地点」、つまり株式のリターンと債券のローリスクさを合わせもった商品なのだと改めて感じた次第です。

ターゲットイヤーファンドを含むバランスファンドの特徴でもありますね!

[スポンサーリンク]

まとめ

  • ターゲットイヤーファンドの特徴は、あなたの人生にあわせて、ファンド側でアセットアロケーションを調整してくれるところ。これ一つでのほったらかし運用もOK
  • 株式主体で運用しているタイミングで金融危機を経験すると、その後の回復力が悪く、元本割れで終わる可能性がある。「安定的な運用に達する前にある程度利益を確保できているか」が、ターゲットイヤーファンドの運用成否を分ける
  • 運用結果の分散は低いので、最終的な着地点を想像しやすい。株式と債券の特徴をうまく併せ持っているとも言える

ちなみにターゲットイヤーファンドは、つみたてNISAやiDeCo(個人型確定拠出年金)で選ぶことができます。

あんまり人気がない(知名度がないので?)傾向にあるんですが、例えばiDeCoで定期預金運用しているよりかは選んだほうが良いと思いますよ!

ターゲットイヤーファンドの記事一覧はこちらから。

ターゲットイヤーファンドの特徴と主な商品リスト
ターゲットイヤーファンドとは、目標となる年(ターゲットイヤー)に向けて、少しずつ資産配分を変えていく商品です。通常は、目標年に向けて株式の比率を下げ、債券や現金資産の比率を高めます。 ★「ターゲットイ...