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高配当ETF「SPYD・HDV」の組み合わせの是非と景気との関係

3. 商品選択と組み合わせ




米国の高配当ETFである「SPYD」と「HDV」の組み合わせを検証したので解説します。併せて保有する方は結構いらっしゃるはずです。

一般に、高配当ETFの組み合わせは「セクター比率が異なるから良い」みたいな結論になりがちです。しかし、セクター比率はリバランスとともに変わってしまうので、セクターに基づいて議論するのは正しいとは思いません

さて、SPYDとHDVはどちらもスマートベータETFで、異なる考え方で組成されています。そのため、異なる視点で組成された2つのインデックスファンドを組み合わせて保有することで、リスクを軽減しつつリターンを取り出せるか、が組み合わせの是非を考える際に重要だと思うのです。

そこで、最初にHDVとSPYDの相関係数を紹介し、お互いを補完できるかについて検証します。次に、2011年以降のHDVとSPYDのデータと、2つのETFを50%ずつ保有した場合について見ていきましょう。

最後に、HDVとSPYDの成績差がつく理由として、1つ考えられるものを紹介します。

ちなみに「高配当ETFはコロナショックでS&P500にぼろ負けなので、買うべきでない」とは言わないので安心してくださいw

なお、ETFの選び方については以下の記事もご覧ください。

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2つのETFの相関係数

最初に、SPYDとHDVを組み合わせることで、短期的な値動きを打ち消しあうことができるかを見てみましょう。

2つのファンドを組み合わせてリスクを軽減できるかは、両者の相関度合いに依存します。例えば、HDVが値上がり(値下がり)したときにSPYDが値下がり(値上がり)すれば、価格変動をうち消すことができますよね?

そこで、HDVとSPYDの相関を求めたのが以下の図になります。

HDVとSPYDの相関係数の推移

残念ながら、というか当然のように、HDVとSPYDは強い正相関を示します。つまり、どちらかが値上がりした時は、同じようにもう一方も値上がりする傾向があります。

どちらも同じ米国株なので仕方ないですねw

2つの資産の相関が1に近づくほど、両者を保有したときにリスクをうち消すのが困難になります。今回のケースでは、HDVとSPYDを保有することで値動きを打ち消しあう効果はほぼ期待できません保有比率に応じて、より多く組み入れたETFの特徴の影響が強く出るだけです。

この特徴をインデックス投資的に考えると、「別に組み入れてもよいし、無くても良い」って感じでしょうか。少なくとも、お互いを補完しあえる強いメリットはないように感じます。

でも、これではおもしろくないですね。もう少し長期的な目線でみてみますか。

2つのETFを組み合わせて保有するとどうなる?

今度は2011年以降のデータを用いて、HDV(青)とSPYD(橙)と、両者を50%ずつ組み合わせたポートフォリオ(灰)を運用したと仮定して、パフォーマンスを求めたのが以下のグラフです。

すべてのデータは税金を考慮せずに分配金再投資したものを使ってますので、少々理想的なデータだと思ってください。あと、HDVだけ基準価額データを使っていますので、コスト分だけ不利になっています。

HDVとSPYD、両者を50%ずつ組み合わせた時のパフォーマンス

上記グラフを見ると、「コロナショックでSPYDもHDVもぼろ負け。S&P500が大正解(笑)」ってオチになるので、もう少し見方を変えようと思います。以下は、各ファンドを2年運用した時点のリターンをつないだグラフです。

HDVとSPYD、両者を50%ずつ組み合わせたポートフォリオを2年保有した時のパフォーマンス

いろんなものが重なり合ってますが、このグラフは端的に以下のような特徴を示しています。

★2013~2020年までHDVとSPYDを運用した時に言えたこと

  • 2013年頃はHDVがSPYDよりも優れていた
  • 2014年~2018年頃はSPYDがHDVよりも優れていた(特に2016年頃は明確にS&P500以上の成績を出していた)
  • 2018年以降は再びHDVがSPYDを逆転した
  • HDVとSPYDを50%ずつ組み合わせたポートフォリオは両者の中間的なパフォーマンス

HDVとSPYDを組み合わせたポートフォリオは両者の中間的な成績になりました。2013~2020年までの間、HDVとSPYDは交互に成績が良くなったり悪くなったりしたため、組み合わせて保有する意味はありました

ちなみに2016~2017年頃は、HDVもSPYDもS&P500以上のパフォーマンスを出せていました。これがスマートベータに期待するところですね。

2つの高配当ETFの成績差はどこで決まるの?

ところで、なぜHDVの成績が良い時期と、SPYDの成績が良い時期があったのでしょう?

これ割と重要な気がします。

そこで、先ほどの2年保有期間リターンのグラフから「HDVの成績からSPYDの成績を引いたもの」と、景気動向を示す「米国ISM製造業購買担当者景気指数」を重ねてみました。

米国ISM製造業購買担当者景気指数は景気動向を示すもので、50を超えると景気拡大、50を下回ると景気後退と判断されます。

詳しくはググってくださいw

HDV-SPYDと米国ISM製造業購買担当者景気指数

このグラフを見ると、米国ISM指数が低くなる時にHDVの成績が良くなり(青線が下に振れる)、米国ISM指数が高くなる時にHDVの成績が悪くなる(青線が上に振れる)傾向が見えるように思います。

つまり、HDVがSPYDに対して好成績を出すときは景気が悪く、逆にSPYDがHDVに対して好成績を出すときは景気が良い可能性があります。これは以下の2点から納得がいく結果だと個人的に思います。

★景気動向でSPYDとHDVの成績が変わる理由

  • 景気が良い時はどんな銘柄でも買われるので、均等ポートフォリオのSPYDには追い風。一方、HDVは上位構成銘柄(おそらく高配当の大型株)の雰囲気で成績が決まるので、株価が伸び悩む可能性
  • HDVは企業の財務や配当持続性など、銘柄を選ぶ要件が決まっている。一方、SPYDは財務を銘柄選定の根拠にしないため、景気後退期では大きな負債が株安要因になりやすい

SPYDとHDVの組み合わせはありか?なしか?

ここまで述べた特徴から、HDVとSPYDはお互いの値動きを打ち消しあう効果はない(強い正相関)ものの、景気拡大期と景気後退期の2つの局面に備えるために、両者を組み合わせて保有するメリットはありそうだ、という考えに至りました。

将来は過去と同じとは限りませんが、HDVやSPYDの特徴を考えると、景気との関係は将来もそこまで変わらないんじゃないかなぁとは思います。

なお、高配当で守りのポートフォリオとするならば、SPYDよりもHDVのほうが向いていると思います。

参考までに1日あたりの値動きの大きさはSPYDが大きくなりやすいことを知っておいてください。

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まとめ

  • 人気の高配当ETF「HDV」と「SPYD」について、両者を組み合わせて保有するメリットはあるかを検証
  • 運用時期によってHDVが優れる場面とSPYDが優れる場面がある。また、場合によってはS&P500を超える成績を出せる可能性がある
  • 景気後退期ではHDVの成績がよく、拡大期ではSPYDの成績がよくなる可能性がある

いやー、米国ISM製造業購買担当者景気指数との関係はびっくりですね。景気との関係を見ると、2つのETFはスマートベータのメリット・デメリットがパフォーマンスに出ているように感じます。

セクター以外の論点から組み合わせて運用するメリットなどを見つけることができて良かったですw