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全世界株式と米国株式のどっちに投資すればよい?2020年時点の考えをまとめる

3. 商品選択と組み合わせ




例えば、つみたてNISAの商品選びにおいて、「全世界株式と米国株式のどっちに投資すればよい?」という質問をよくいただきます。

今回は過去30年の相場を参考に、全世界株式と米国株式のどちらに投資すればよいかを考えてみました。

記事の結論を述べると以下のようになります。

★全世界株式と米国株式のどちらに投資する?

  • 米国の安定的な成長と主に中国の混乱の可能性を考えるなら米国株
  • 米国の景気循環や主に中国のさらなる躍進の可能性を考えるなら全世界株

米国株(S&P500)への投資は少数精鋭の投資になります。米国株を選ぶ方は米国小型株なども併せて運用すると、S&P500のパフォーマンスが出なくなった時のちょっとしたリスクヘッジになるかもしれません。

では詳しく見ていきましょう!以下、米国株と中国を念頭に新興国株という構図で解説します。

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1990年以降のパフォーマンス

最初に1990年7月を基準とした全世界株式と米国株式のパフォーマンスを紹介します。

1990年7月を基準とした全世界株式と米国株式の30年チャート

米国株式(S&P500)は、1990年からの30年間で全世界株式(オールカントリー)よりも良い成績を出しました。これは米国株が少数精鋭なのに対し、全世界株式が運用成績の悪い国なども投資対象に含めていることも起因していると思います(例えばバブル崩壊後の日本株のように)。

ただ、このグラフだけで「じゃあ米国株式」と言い切るのでは、わざわざ記事に書く意味がないですね。そこでもう少し詳細にみていきましょう。

全世界株式と米国株式の成績差を決めるもの

米国株式と全世界株式の成績差を決める要因の1つに、新興国(主に中国やインド)の景気拡大が影響している可能性があります。そこで、米国株式と全世界株式のサイクル性と、その時どういった要因があったかを紹介します。

米国株式と全世界株式を1年間保有した時のパフォーマンスを線でつないだグラフを紹介します。青い線が橙色の線を上回ると全世界株式に対して米国株式の成績が良く、青い線が橙色の線を下回ると全世界株式に対して米国株式の成績が悪いことを示します。

1990年7月以降の全世界株式と米国株式の保有期間リターン(1年)

矢印で示したように、米国株式の成績が良い時期と全世界株式の成績が良い時期が交互に生じています。そこで、今回は2つの時期を例に、全世界株式がどのような時に米国株以上の成績になるかも調べました。

1つめはITバブル崩壊後からリーマンショック前までの期間です。

以下は全世界株式から米国株式の成績を引いたもの(橙)と、コモディティインデックス(S&P GSCI Commodity Total Return)(青)を重ねたものです。

2000年代の全世界株式のパフォーマンスは資源価格上昇と関係

2000年代の全世界株式の高い運用成績は、資源価格の上昇と連動しています。この頃は中国のWTO加盟で世界的に貿易量が増えたことに加え、ドルの価値が下がった(ドルインデックスが低下した)ことで資源価格が上がり、多くの資源国に恩恵がありました。

もう1つ2017年の例を挙げます。

2017年の全世界株式のパフォーマンス向上は主に中国株やIT企業を中心とした景気拡大に支えられています。この時は資源価格が上がらなかったため、資源国全体が潤うほどにはなりませんでした(言い換えると、資源価格の上昇がなくともパフォーマンスが上がるようになったとも言えます)。

2017年は資源価格と関係なく全世界株式の成績が向上

2017年は中国株とテクノロジー銘柄が回復をけん引した。

出典:2018年の新興国株式の見通しと投資すべき5つの理由 | アライアンス・バーンスタイン株式会社

このような経緯を踏まえ、全世界株式から米国株式の成績を引いたものと、新興国と米国のGDP成長率を引いたものを重ねたグラフが以下です。

全世界株式から米国株式を引いた保有期間リターンと、新興国から米国のGDP成長率を引いたグラフ

一部例外もありますが、全世界株式の成績は新興国のGDP成長率が高い時期ほど優れる傾向にあります。一方、新興国のGDP成長率が低下してきた2010年代は、米国株(特に巨大IT企業)が堅調な時代になりました。

ここから、将来の新興国のGDP成長率が高まるなら全世界株式の成績が良くなり、成長率が伸びないなら全世界株式の成績も伸びないのでは?という仮説が立てられます

全世界株式と米国株式のどちらが良いか

新興国にどのような見通しを持つかで決める

上記の検証から、米国株式に対して全世界株式の成績が良くなりそうな時期は以下のような条件がそろっているタイミングだと言えます。

全世界株式が有利になりそうな時期

  • 中国を中心に企業業績が拡大したとき
  • 資源価格が上がったとき
  • 新興国のGDP成長率が高まったとき

これらはすべて連動しているんでしょうね。例えば、ドルが安くなると資源価格は上昇すると同時に、ドル建ての債券を発行している国は債務が軽くなるなどのメリットがあります。

といった結果を踏まえ「全世界株式と米国株式のどちらに投資すればよい?」との質問は以下のように考えてよいと筆者は考えています。

★全世界株式と米国株式のどちらに投資する?

  • 米国の安定的な成長と主に中国の混乱の可能性を考えるなら米国株(または先進国株)
  • 米国の景気循環や主に中国のさらなる躍進の可能性を考えるなら全世界株

全世界株式に投資できる適切な商品は、以下の記事で検証しています。

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バブルが「崩壊」するたびに、その次の10年間は株式市場の「主役」が交代するパターンを株式市場は繰り返してきた

出典:米国株か?世界株か? | ピクテ投信

その対策として、S&P500ではなく全米株式を投資対象にしたり、小型株をポートフォリオに組み入れる案も念のため紹介しておきます。

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まとめ

  • 1990年を基準にしたパフォーマンスは全世界株式よりも米国株式が高かった
  • 資源価格の上昇や世界的な好景気などで、新興国のGDP成長率が高まると全世界株式は良い成績になりやすい
  • 米国株式(S&P500)一本は少数精鋭の戦略。大型株バブルとその後の低迷に注意

米国株が来るか、その他の市場の株が来るかは割と米国の政治的な判断の影響も大きいです。そういう意味では、やっぱりアメリカは世界経済の中心地なのですね。

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