ウィズダムツリーのETF「XSOE(新興国株ニューエコノミーファンド)」を解説します。
WisdomTree Emerging Markets ex-State-Owned Enterprises Fund | WisdomTree
「新興国の高い成長率に期待して投資したい」方は結構いらっしゃるんですが、ここ10年の新興国株式のパフォーマンスはイマイチでした。理由の1つに、「新興国株式には国有企業が含まれており、その企業群が指数のパフォーマンスを悪くしている」というものがあります。
今回紹介する「XSOE」は、国有企業を除いた新興国株式に投資するもので、ニューエコノミーの比率を高めることで高いパフォーマンスを目指すETFです。
なんとなく一般的な新興国株式ファンドを買うよりはXSOEのほうが良いかもしれませんね!ってお話です。
[スポンサーリンク]
XSOEはどんな商品なの?
国営企業を除外するメリット
改めて、XSOEは米ウィズダムツリー社のETFです。
XSOEは国が20%以上の株式を保有する企業を「国営企業(State-Owned Enterprises)」と定義し、その国有企業をポートフォリオから除外します。残った民間企業を浮動株調整時価総額比率で保有し、運用を行います。ポートフォリオの作り方は伝統的な手法ではあるものの、特定の条件で銘柄選別を行っているため「スマートベータETF」の一種になります。
さて、ウィズダムツリー社の資料によると、国営企業(Non-SOE)か民間企業(SOE)かで最近の運用成績はがらりと変わるようです(下図)。国営企業はパフォーマンスが悪く、グラフの最も右側(2020年6月)までリーマンショック前のパフォーマンスに戻りません。
国営企業のパフォーマンスが悪い理由の1つに、国有企業にはエネルギーや金融などの「オールドエコノミー」銘柄が多いことが原因の1つとして挙げられます。この2つのセクターは、リーマンショック以降長らく低迷し続けてきました。
一方、民間企業に多いのが一般消費財(Consumer Discretionary)や情報技術(Information Technology)などのセクターです。
つまり、XSOEはエネルギーや金融など、パフォーマンスの悪かった国営企業を省き、一般消費財や情報技術への投資比率を高めているのです。
ほかにもこんな話も。割と納得感を持ってる読める気がします。
新興国株式では民間と国有では有意に民間のほうが株式リターンが高くなるとされています。
(まあ、先進国企業でも国有企業株なんていりませんが…)
たとえばどうでしょう、日本の市役所や県庁の株があるとしてリターンや配当が高く出そうでしょうか。
単純な話で、株主のほうを見てない会社というものに投資をしてはいけないと思います。
株価を押し上げ配当を出すことを目標の一番にしてない会社に投資してもしょうがないですね。
主な構成銘柄
XSOEの主な構成銘柄と構成国比率を見てみましょう。
★XSOEの上位構成銘柄10種と主な事業内容
- テンセント(中国):ソーシャルネットワークサービス
- アリババ(中国):Eコマース・インターネットサービス
- サムスン電子(韓国):総合家電・電子製品
- 台湾セミコンダクター(台湾):半導体製造
- 平安保険(中国):保険会社・インターネット金融
- 美団(中国):オンライン口コミサイト
- ナスパーズ(南アフリカ):多国籍メディア
- リライアンス(インド):コングロマリット(資源開発やインフラを手掛ける複合企業)
- JD.com(中国):Eコマース
- ルクオイル(ロシア):石油関連企業
XSOEの上位構成銘柄にはテンセントやアリババが含まれる一方、時価総額の大きいCHINA CONSTRUCTION BANK CORP(中国建設銀行)は含まれません。
また、XSOEの構成国比率では中国や台湾、韓国など、アジアの国が並びます。このあたりの比率は一般的な新興国株式インデックスに似ています。
経費率等
その他、XSOEの特徴は以下の通り。
ティッカー | XSOE |
---|---|
投資先 | 国営企業を除いた新興国株式500社超 |
ベンチマーク | Emerging Markets ex-State-Owned Enterprises Index (新興国株式インデックス(国営企業除く)) |
価格 | 40.87ドル |
取引単位 | 1口 |
購入手数料 | 証券会社に依存 |
経費率 | 0.32% |
純資産 | 約1384億円 (1330.29ミリオンドル) |
分配頻度 | 四半期(3/6/9/12) |
分配金利回り | 1.75% |
運用会社 | WisdomTree |
パフォーマンス
以下はXSOEのパフォーマンスです。比較対象として、VOOとEEMを挙げています。
XSOEは一般的な新興国株式と同様の値動きをするものの、ここまで新興国株式を上回ってきました。また、時には米国株式以上の値上がりを見せる場面もありました。
このグラフの比較では、結果的にXSOEは米国株式には劣ったものの、新興国株式のパフォーマンスを上げるためにXSOEを保有することは理に適ってるように思います。
もしかしたら、将来エネルギーや金融関連のセクターが強くなるかもしれませんが、「株主を見ない企業が足を引っ張る」可能性は十分にあるとも思います。
分配金
XSOEの分配金利回りは1%後半で普通の水準です。XSOEは、ウィズダムツリーの他のETFと違って、高配当や配当成長を掲げていないので、配当は特徴にはなりません。
しかし、低迷する一般的な新興国株式に比べると、XSOEはグロース株的な特徴を持っていると言えます。株価が上がり、配当も増えることに期待してもよいかもしれませんね。
[スポンサーリンク]
まとめ
- XSOEは、米ウィズダムツリー社のスマートベータETF。新興国の国営企業を除いて投資する
- 国営企業には金融やエネルギーなどのオールドエコノミー銘柄が多い。これらの銘柄はリーマンショック後低迷したセクターだった。加えて「国営だから」という理由はパフォーマンスを悪くする要因かもしれない
- XSOEは一般的な新興国株式よりもパフォーマンスが良かった。分配金利回りは普通の水準だが、株価が上がることで、配当成長株的なリターンを期待したい
2020年現在、新興国株式への投資は全世界株式ファンドなどを使うケースが多くなりました。そのため、XSOEを積極的に選ぶ機会は少ないと思いますが、新興国株に投資して超過利益を得たい場合には知っておいて損はないと思います。
個人的には結構好きですね。
なお、XSOEの類似ファンドに「CXSE」というETFもあるので、併せてご覧ください。
また、ファンダメンタル的に優れた新興国株式に投資できる商品もあります。