最近、個人的には各資産と景気サイクルとの関係を重視しています。サイクルというとハワード・マークス氏的な感じですが、まさにそんな感じです。
最重要項目にまちがいなく一番近い要素は、市場サイクルを理解することだ。これまで私が知り合ったすぐれた投資家の大半は、サイクルの一般的な動き方と、「今、サイクルのどこに位置しているのか」を察知する類まれな感覚を身につけている。
つみたてNISAの場合、景気サイクルに応じて商品を流動的に変えることはできない(し、やらないほうが良い)のですけど、長期の積立投資の中で景気サイクルの強い局面に賭けたいのか、景気サイクルの弱い局面に備えたいのかの観点から商品を選ぶことはできそうだと思ったわけです。
っていうお話を紹介したく思います。
効率的フロンティアとかそういう話は見てません。あくまで各株式資産と景気との関係だけです。
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株式資産と景気サイクルの関係
景気が良いほど全世界株式が強く、景気が悪いほど米国株が強い
まず、先進国株式、全世界株式(日本を含む)、新興国株式の3つの投資信託のパフォーマンスを紹介します。2021年8月末までのものです。
※この3つについては、詳しい解説を以下の記事で行ってます。
これを見ると、ある局面では「新興国株式 > 全世界株式 > 先進国株式」となり、またある局面では「新興国株式 < 全世界株式 < 先進国株式(さっきと逆)」になっていることがわかります。
で、ここから先進国株式と全世界株式の差と米国の10年債の関係を見たものが以下です。
米国債金利の下落局面では先進国株式が強く、逆に金利上昇局面では(微妙なところもありますが)全世界株式が強いとの関係になっています。
これってたまたま偶然ではなく、景気状況の変化が株式のパフォーマンスにも反映されていると思うんです。
以前も紹介しましたが、新興国株式が強い時は米ドルが弱く、物価(コモディティ価格)が上がりインフレが加速している状況です。
逆に、景気が失速してくると、相対的に先進国株式が強くなります。
JPモルガンアセットマネジメントの資料によると、景気が失速してきたときに相対的に強くなるのは米国株だそうです(下図)。
出典:Guide to the Marketsの資料を基に改変
というわけで、ここまでの話をまとめると、投資の成績を向上させるなら「景気が悪い時ほど資産を米国株に集めたほうが良く、景気が良い時ほど資産を全世界株式に分散させたほうが良い」との関係が描けます。
ただ、冒頭でも述べたように、つみたてNISAは景気サイクルに応じて商品を流動的に変えることに向いてないので、景気のどの局面にウェイトを置くかを基準に商品を選ぶのはどうでしょうかってお話になります。
主な投資信託と景気サイクルを結びつけると
一部想像で語りますが、たぶんこんな関係になると思います。
★景気拡大期に強い資産(※番号が小さいほどパフォーマンスを期待できる商品です)
- 新興国株式クラス:eMAXIS slim 新興国株式インデックス
- 全世界株式クラス(小型株含む):楽天・全世界株式インデックス・ファンド
- 全世界株式クラス(小型株除く)eMXAIS slim 全世界株式(オール・カントリー)
- 先進国株式クラス:eMAXIS slim 先進国株式インデックス
- 米国株式クラス(小型株含む):楽天・全米株式インデックス・ファンド、SBI・V・全米株式インデックス・ファンド
- 米国株式クラス(小型株除く):eMAXIS slim 米国株式(S&P500)
★景気後退期に強い資産(※番号が小さいほどパフォーマンスを期待できる商品です)
- 米国株式クラス(小型株除く):eMAXIS slim 米国株式(S&P500)
- 米国株式クラス(小型株含む):楽天・全米株式インデックス・ファンド、SBI・V・全米株式インデックス・ファンド
- 先進国株式クラス:eMAXIS slim 先進国株式インデックス
- 全世界株式クラス(小型株除く)eMXAIS slim 全世界株式(オール・カントリー)
- 全世界株式クラス(小型株含む):楽天・全世界株式インデックス・ファンド
- 新興国株式クラス:eMAXIS slim 新興国株式インデックス
日本株は書いてないのですが、先ほどのJPモルガンアセットマネジメントの資料を考えると、新興国株式クラスの次に景気連動性が高そうですね。
ちなみに、こういう景気サイクルでパフォーマンスが変わる理由は、景気に敏感な銘柄の影響と考えられます。
米国大型株(S&P500)はどんな時も安定的な大企業が多いのに対し、小型株や新興国の企業が含まれる全世界株は景気で業績が大きく変わる銘柄も多くなると予想できます。
保守的なら米国株、積極的なら全世界株
というわけで、ここまで述べた関係から商品を選べるんじゃないかと思うんです。
★景気サイクルを考慮した商品選び
- どんな時も安定的なリターンを期待するならeMAXIS slim 米国株式(S&P500)
- 景気加速時の高リターンを期待するならeMXAIS slim 全世界株式(オール・カントリー)
特に新興国株式の比率は景気加速時のリターンに影響するので、もっと高いリターンを期待するなら3地域均等型やGDP型という選択も視野に入ります。
2021年現在は、世界の株式の価格相関性が強く、どんなに広く分散しても損をするときは等しく損をすることが多いです。一方、特に米国のグローバル企業は世界中に売り上げを分散させているため、米国株を持つことで間接的に世界分散であるとの考え方も理解できます。
なので、世界景気のどんな局面に備えたいかで分散の度合いを変えると良いんじゃないかと思ったところです。
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まとめ
- つみたてNISAで選べる主な株式資産と景気サイクルの関係をチェック
- 景気拡大期~加速時には全世界株式に広く分散すると高いリターン。景気のピークを越えると米国株が相対的に優れる(分散しすぎない方が良い)
- どんな時も安定的なリターンを期待するならeMAXIS slim 米国株式(S&P500)。景気加速時の高リターンを期待するならeMXAIS slim 全世界株式(オール・カントリー)
1990年以降のリターンでは米国株に軍配が上がります。これは直近GAFAMの強さもあると思うんですけど、「全世界株式が景気連動性が高い→株安時の下落が大きい→運用効率が米国株に劣る」て関係もある気がします。
なお、サイクルの話をもっと詳しく知りたければ、ハワード・マークス氏の本もチェックしてみてください。
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